トヨタ自動車は、少なくとも2030年までは新エネルギー車の大半をハイブリッド車(HV)が占めると見ており、同社にバッテリーを納入する業者もそれに対応した戦略を進めている。
■HV用電池の生産強化
ブルームバーグ通信によると、トヨタが80.5%、パナソニックが19.5%を所有するバッテリー会社プライムアースEVエナジー(PEVE、静岡県湖西市)は現在、HV向けのバッテリーセルだけを造っており、その大半をリチウムイオンではなく旧式の重いニッケル水素蓄電池が占めている。
同社はビジネスの方向性を早急に変えるつもりはなく、プラグイン・ハイブリッド車(PHV)や完全電気自動車(EV)に必要なエネルギー密度の高いバッテリーを生産するかどうかの決断は20年代初頭までに下す予定だ。ただし、中国のバッテリー大手コンテンポラリー・アムペレックス・テクノロジー(CATL)やBYDが急速に台頭しているため、それ以上待つと商機を逃す恐れがあると見ている。
PEVEの鈴木茂樹社長は、13年に就任する前はトヨタの次世代バッテリー開発事業を統括していた。「トヨタの強みはハイブリッド。今トヨタはハイブリッド・バッテリーを当社に依存しており、その要求に応えるのに手一杯」と話す。
■トヨタの戦略
トヨタは、競合する自動車メーカーや政策決定者が新エネルギー車の主力として重視するEVの導入が遅れた。30年までに販売台数の半分に相当する550万台を電動化するという目標の中心にはHVを置いており、PHVも含め450万台のハイブリッド販売を目指している。
ところが現在、PEVEの生産能力はこの3分の1ほどしかない。このためPEVEは、積極的に生産力を拡大し、21年までに国内生産力を年間約250万個に増やそうとしている。また中国での生産も、2つ目の工場が稼働する20年には約21万個に倍増させる予定だ。
■中国でもHVに勢い
ブルームバーグ・インテリジェンスによる8月の報告書によると、HVは現在、値段が比較的手頃で航続距離の不安もないため、EVよりも売れている。中国では18年上半期、PHVの販売台数が前年同期比160%増えたのに対しEVは100%増となっており、アナリストは「中国では今後数年、低公害車の選択肢としてはEVよりHVが有利になる」と見ている。
PEVEはEV用バッテリーを完全に無視している訳ではなく、いくつかの試作品を作っている。品質はまだ商業化の域に達していないが、もし市場参入となれば、生産は中国で既存の地元パートナーと行う可能性が高いという。
トヨタは20年に中国でEVの発売を計画しており、20年代初頭までに少なくともEVを10モデル提供する予定だ。 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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