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終活のススメ~目に見えない資産(財産、権利関係、デジタル資産等)の整理・片付け
文&写真/蓑田透(Text and photo by Toru Minoda)
- 2020年7月29日
ここ数年、日本では終活への関心が高まっています。終活とは「人生の最期を迎えるための準備活動」のことです。その一つに自分が亡くなってしまった後、家族(遺族)が困らないよう身の回りの物の整理・片付けがありますが、今回はその中でもその取り扱いや処分に苦労しがちな目に見えない財産(金融資産)や権利関係、デジタル資産に関する整理、片付けについて紹介します。
1.銀行の預貯金
一般的にステートメント(入出金履歴)やキャッシュカード、通帳(日本の場合)があれば、家族としても把握しやすいでしょう。今日、複数口座を持つ人は少なくありませんが、こうした書類を整理して保管しておけば後で家族が取り扱う際に便利です。米国居住者は、以前日本で利用していた日本の銀行の口座がそのまま残っている場合は要注意です。2018年1月に施行された「休眠預金等活用法」により10年間入出金がないと休眠口座として預金保険機構に移管されます(預金を没収されるわけではありません。必要な手続きで引き出せます)。
特に目的もなく口座を多く持っているのであれば、将来家族が困らないよう使わない口座を解約するか、残高を少額または0にしておいたほうが良いでしょう。なお、オンライン(インターネット)で利用、管理していて書類等がない場合は後述の「6.デジタルデータ」をご参照ください。
2.金融機関(銀行以外の証券会社、投資顧問など)の預金
銀行同様、ステートメントなどの書類があれば整理、保管し、また利用していない口座があればなるべく解約するか、残高を少額または0にしておいたほうが良いでしょう。
3.重要書類
主に財産管理に必要となる通帳、証書(各種保険証書、年金証書、金融機関の預り証など)、権利書(日本の不動産の場合)、有価証券を指します。重要な書類ですから、通常は目につかないところ、鍵の付いた引き出しや金庫にしまわれているケースも少なくないと思われます。したがって、これらの目録や保管場所を何らかの形で記しておくのが良いでしょう。一般的にはエンディングノートに書いておき、その存在を家族(遺族)に伝えておけば、不慮の事故死や認知症になった際に家族の役に立ちます。
4.クレジットカード
クレジットカードは利用頻度、金額、利用形態(本人使用、家族使用、キャッシングなどの目的)にもよりますが、必要以上の枚数を保有する必要はありません。最低限のものだけ残して解約したほうが良いでしょう。また利用明細書を残しておくと家族は把握しやすいです。
5.借金
生存中に返済できればよいですが、返済が残ったまま死亡すると相続人に迷惑がかかります。この場合、相続人が借金を放棄する「限定承認制度」というものがありますが、①相続人から3カ月以内の申し立てが必要、②申し立てを行うかどうかはプラスとマイナスの財産の両方の確認が必要、となり、この手続きだけで相続人に負担を強いることになります。
また、生存中に借金を返済できない場合は自己破産という選択肢もあります。どうしても返済できない場合の最後の手段になりますが、自己破産をしても受給中の公的年金は差し押さえの対象にはなりませんので、必要な生活費は維持することはできます。
注)本項目は日本在住の親や将来日本へ帰国する人向けに、日本の法律(民法、破産法など)をベースにしています。米国内では米国の法律をご確認ください。
6.デジタルデータ
デジタルデータの種類についてはいろいろな分け方がありますが、①金融機関(オンラインバンキング、ネット証券など)の資産に関するもの、②各種会員サービス(クレジットカード、マイレージ、通販など)の利用に関するもの、③メール、SNSなどコミュニケーション履歴、④PC、スマホ、クラウド上の写真、メモなどがあげられます。
スペースの関係で今回詳しくは紹介できませんが、基本事項としてスマートフォンやPCへのアクセス情報(ID、パスワードなど)をエンディングノートなどへ残すなど(ただし、セキュリティには細心のご注意を)、何らかの方法で家族がデジタル資産の存在を把握し、後で管理できるようにしておくことです。少なくとも上記①の金融資産については、家族(遺族)にとっても大変重要なので事前に整理しておきたいものです。
なお、スマートフォンの利用者が死亡したもののID、パスワードが分からない場合は要注意です。毎月の使用料が発生するということで家族が早めに解約手続きをするかもしれませんが、金融情報などがスマートフォンに含まれているかもしれないためです。ロックの解除を試みたうえで中身を確認してから、解約手続きしたほうが良い場合もあります。一方で、スマートフォンのロック解除は容易ではありません。専門業者を探し相談することも検討した方がよいでしょう。
いかがでしょうか? 親へのアドバイス、ご自身の終活として参考にしてみてください。
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