富士フイルム、低迷市場でニッチを発掘 〜 ミラーレス・デジカメで大健闘

 デジタル・カメラの販売が減速するなか、富士フイルムのXシリーズは非常に好調な伸びを記録している。

 ニューヨーク・タイムズによると、富士フイルムはかつて、35ミリ・フイルムの大手メーカーだったが、デジカメの普及にともなって、この10年間で様々なデジタル画像技術のプロバイダーへと変身を図り、成功させている。IBMがメインフレームやパソコンのメーカーからソフトウェアとITサービスへのプロバイダーに変身したのと共通するものがあるかもしれない。

 富士フイルムが新戦略の一つとして打ち出したのは、アナログ時代を彷彿させるレトロな雰囲気をデジタル技術に組み合わせた新しいミラーレス・カメラ製品群のXシリーズだ。同社は2011年に最初の機種「X100」を発売して以来、70万台以上を販売している。

 それに対し、かつての競合社であるコダックは、経営破綻後に会社更生法の保護下からようやく脱却したところだ。

 富士フイルムは現在でもフイルムを作っているが、総売り上げに占めるフイルム事業の比率は1%以下で、カメラを含むイメージング・ソリューション部門も13%にとどまっている。主な収入源は、薬品や医療機器、オフィス機器だ。

 カメラ業界では、スマートフォンの台頭によって、安価なカメラを中心に販売が激減した。また、近年では、ニコンやキヤノンの高級デジタル一眼レフ・カメラ(DSLR)も売れなくなっている。

 カメラ映像機器工業会(CIPA)によると、デジカメ全体では2013年1〜9月に出荷台数が前年同期比39%減、出荷高では26%減少した。かたや、ミラーレスを含むノン・リフレックス・カメラ分野では、出荷台数13%減、出荷高5%減と打撃が小さい。

 ミラーレスは、自動照準カメラより高価だが、本体のみで3000ドルもするニコンD800といったプロ仕様のDSLRよりはるかに安い。Xシリーズから発売された「X-E2」は約1000ドルだ。

 ミラーレスはまた、DSLRより遥かに軽い。DSLRのニコンD800は約1kgもあるが「X-E1」はわずか350gで、レンズもコンパクトだ。

 さらに、多くのミラーレスは単に小さなデジカメのようだが、Xシリーズは古いライカのような外観を模し、また、普通のデジカメのようなボタンやソフトウェア・メニューではなく、露出やシャッター速度の操作には昔ながらのダイアル式コントロールを用いている。

 富士フイルムの販促担当者によると、「当社にはフイルム事業の歴史があるため画質を重視しているが、画質は説明が難しいため、別の何かが必要だった」と話す。

 同社では、手に取ってみようかなとプロに思わせることを目指し、多くのカメラマンに話を聞き、各部分の形や色、質感にこだわった。たとえば、銀色だけをとっても10種類以上の色合いを検討したという。

 ミラーレスは欧米よりアジアで人気が高いが、Xシリーズは世界中に愛好者がいる。調査会社IHSの業界専門家は富士フイルムの健闘について、「高級ミラーレスというニッチ市場を開拓した」と指摘する。

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