原油タンク車の安全強化で難題〜旧型貨車はカナダで流用できず

 シェール革命がもたらした原油の増産に伴い、北米で原油輸送中の貨物列車事故が増加していることを受け、タンク車の安全基準強化が検討されているが、古いタンク車の有効活用が難しく、計画の遂行が危ぶまれている。

 ロイター通信によると、運輸省は、現在米国で使われている約9万両のタンク車を刷新して安全性を高める計画で、コストを30億ドル以上と見込んでいるが、約2万3000台をカナダで引火性の低いオイルサンド由来の原油(ビチューメン)の輸送に使えば車両入れ替えが円滑に行くと考えている。2014年7月の計画発表時には、「新規制によって引退する車両はない」と宣言していた。

 ところが業界専門家は、古い貨車をビチューメン輸送用に改造するのは簡単ではなく、多くは廃車になると見ている。糖蜜のように粘りの強いビチューメンを「コンデンセート」と呼ばれる軽質燃料で薄めれば汎用タンク車でも運べるが、荷主の多くは、ビチューメンを電熱線内蔵のタンク車で暖めながらそのまま運び、製油所での荷下ろしを簡単にしたいと考えるためだ。普通のタンク車に40年以上持つ保温機能を加えることは可能だが、新車を造るよりコストがかかるという。

 年内に1日3万バレル(bpd)に上る原油の鉄道輸送を目指しているカナダの石油生産第2位セノバス・エナジーは、保温機能付きの新しいタンク車のリースを計画している。また、米製油大手バレロ・エナジーは、15年半ばまでにカナダから4万5000bpdのビチューメンを受け取る見通しだが、ルイジアナ州セントチャールズの製油所などへの輸送は主に保温タンク車を使う予定で、すでに2900台を発注しており、向こう12カ月間に受け取ることになっている。

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