衰え知らずのアイフォーン、あと数年で衰退か 〜デビューから10年、忍び寄る後退期

 アイフォーンが2007年6月28日にデビューしてから丸10年が経つ。携帯電話の外観や機能設計だけでなく、あらゆるものごとのあり方や生態系に影響を与え、あらゆる世界標準を確立したアイフォーンは10年経ってもいまだ健在だ。しかし、そのアイフォーンでもいつかは終焉を迎える。そして、その終焉に影響する次世代の波は静かに起きている。コンピュータワールド誌が報じた。
 
 ▽累計10億台
 
 直近の統計によると、アイフォーン(iPhone)はこれまでに世界市場で累計10億台を売り上げた。現在流通されているアプリケーションの数は220万に達する。
 
 技術の進化や革新が速い消費者技術製品市場において、10年経っても影響力を持ち続けながら最大手の一つとして君臨する製品はほとんどない。
 
 アイフォーンがデビューしたころ、パーム・プリ(Palm Pre)がまだあり、携帯電話市場ではノキア(Nokia)やブラックベリー(BlackBerry)が市場を席巻していた。その両方とも撤退または風前の灯状態だ。サムスン(Samsung)の姿はどこにもなかった。
 
 ▽アップ・ストアーとアイチューンズが下支え
 
 アイフォーンがアイフォーンたるおもなゆえんは、アップルがアップ・ストアーを2008年の夏に立ち上げ、2009年にはアイチューンズをiOSと同期できるようにしたことに起因するといえる。
 
 アイフォーンだけでも少しは流行っただろうが、アップ・ストアーの登場でアイフォーンの価値が劇的に上がり、アイチューンズ新版によってそれがさらに支えられた。
 
 ▽消費者技術製品の主体はハードウェアにあらず
 
 それが意味することは、消費者技術製品の生命線がハードウェアではなくソフトウェアに決定的に左右されることをあらためて裏付けたということだ。
 
 米技術業界では、技術製品が売れるか売れないかはハードウェアの外観や価格、性能ではなく、プラットフォームとソフトウェア(アプリケーション)によって何をどのように可能にするかで決まる、と以前からいわれる。
 
 数え切れない種類の携帯電話の市場にいおいて、アイフォーンがいまの地位を築いた大部分の理由はそこにある、というのが業界専門家らの共通した認識だ。
 
 ▽ソフトウェアやプラットフォームの設計に弱い日本
 
 そして、単体としてのハードウェアの性能にこだわり、ソフトウェアを軽視し続けた日本の消費者電子機器メーカーらが世界市場で衰退した理由もそこにある、と多くの専門家らは指摘する。
 
 20年近く前までは、消費者電子製品の多くの分野で日本企業の存在感は大きかった。しかし現在、同分野で上位5社に入る製品を生産する日本企業はゼロになった。
 
 日本企業は昔からハードウェア開発を重視し、ソフトウェアやプラットフォームの開発には無頓着だった。現在でもそれは変わらない。日本はソフトウェア開発に極端に弱い。
 
 ▽ソフトウェアなしのハードウェア事業は短命
 
 消費者電子製品市場ではこの20年近くのあいだに、ソフトウェアやプラットフォーム、アプリケーション、それらを取り巻く生態系の構築を重視する設計および開発に重点が完全に移行した。
 
 ハードウェア事業はすぐに追いつかれ、競争力を失う。後続企業からの価格競争に勝てなくなり、消費者からは飽きられる。製品価格を抑えられない日本企業はなおさらだ。
 
 そのため、アプリケーションで何ができるかを追求し、アプリケーションとサービスによる利便性と革新性をつねに提供し続け、生態系を確立し、競争力を維持し続ける製品と事業を設計しなければならない。
 
 ▽スマートフォン自体の強い存在感はあと数年
 
 アイフォーンはそれらのすべてを再開発または向上させたことで、新たな業界標準に引き上げて市場を一変し、消費者の暮らしにとって必需品としての地位を確立した。
 
 問題は、デビューから10年が経ついま、アイフォーンがその地位をあと何年維持できるかだ。
 
 それについてはさまざまの見方があるだろう。いくつかの要素や業界動向、市場動向を加味すれば、あと数年ほどでアイフォーンの存在感はかなり弱まる可能性が高い。アイフォーンというよりスマートフォン自体の存在感が弱くなるだろう。
 
 ▽人工知能基盤の仮想執事端末が台頭
 
 その代わり、人工知能を基盤としたスピーカー型仮想執事端末を使う行動様式が日常的になると予想される。
 
 アマゾンのアレクサ(Alexa)やグーグルのグーグル・アシスタント、マイクロソフトのコルタナ(Cortana)といった人工知能に接続して、利用者の要望に対応する端末が、現在のスマートフォン利用の一部に取って代わる流れがすでにある。
 
 現在は、アマゾンのエコーやグーグル・ホームのようなスピーカー型が主流だが、アマゾンは最近、画面付きの新型機種を発表した。仮想執事端末市場もおそらく毎年のように進化版が発表され、姿かたちを変えていく。
 
 ▽スマートフォンから仮想執事端末へ
 
 要は、自然言語による音声指示を理解して、要求や質問に対応する端末が存在感を今後大幅に増していき、それに応じてスマートフォンを使う頻度や時間が少なくなる。
 
 スマートフォンが外出時のデジタル地図参照や音楽再生、簡易ゲーム、通話以外に使われなくなる日はいずれ到来する。それと同時に、天気予報やニュース、各種の予約、出前の注文、オンライン購入、メッセージング、株式売買、銀行口座管理、冷暖房や照明の操作、車庫扉の開け閉め、車のエンジンといったさまざまの操作は音声指示による仮想執事端末が実行するようになる。
 
 ▽人工知能とボットがカギ
 
 それがいつになるのか予想は難しいが、すでに多くの消費者はその方向に向かっている。エコーの好調な売れ行きやグーグル・ホームの追い上げを見れば、それは否定できない。
 
 カギとなる言葉は、人工知能とボット(bot、自然言語での音声認識によって、作業を補佐する簡便化ソフトウェアまたは作業代行ソフトウェアで、代理人ソフトウェアと呼ばれることもある)だ。
 
 【http://www.computerworld.com/article/3203367/apple-mac/a-full-10-years-later-the-iphone-still-dominatesfor-now.html?google_editors_picks=true】(U.S. Frontline News, Inc.社提供)

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