機械学習、人工知能(AI)、サイバーセキュリティといった先進技術分野の専門知識を持つ人材が大幅に不足している。
■育成が追いつかず
ウォールストリート・ジャーナルによると、この問題を抱えるのは自動車業界にとどまらない。ガスタービンからマンモグラフィー機までさまざまなモノを造っているドイツの複合企業シーメンスは現在、世界で37万7000人、米国では約5 万人を雇用しているが、約1500人の空きポストがある。ほとんどでソフトウェアや科学関連の経歴が求められ、条件を満たす人材が全米で2000人にも満たない職種もある。
候補者となり得る人すべてが職を探している訳ではなく、勧誘を嫌がる人もいるため、求人企業がリンクトインのようなSNSサイトでふさわしい人材を見つけることは難しい。大学が人材を育成するより速いペースで最先端技術が進化して いる上、需要が多すぎて関連分野に入ってくる若い人材が足りず、仕事のために引っ越してもいいと考える人も減っている。
2016年、米国の大学では約4000人が数学やコンピューター科学の博士号を修得し、1996年の2倍に上ったが、応用数学や統計学といった細かい分野で見るとまったく需要に追いついていない。ロボット工学に至っては、分野が新しすぎて16 年の博士号取得者はわずか120人だった。シーメンスは、優秀な候補を見つけると他社に奪われないようできるだけ早く 面接し、採用決定を下すように努めている。高額の報酬で誘うことは極力避けているものの、データ科学関連の雇用で提示した給与は過去1年で約10%、特殊分野では25%も上がった。候補者には「商品のデザインや開発ではなく、大学院でや っていたような研究を続けることができる」と持ちかけ、学生の興味を引くためパデュー大学、カーネギーメロン大学などに研究者を派遣して研究の内容を説明させることなども行っている。
■人材が集まる場所で確保
トヨタ自動車は、自動運転やロボット分野などの技術革新を目指して16年にトヨタ・リサーチ・インスティチュート(TRI)を開設した。TRIはカリフォルニア州ロスアルトス、マサチューセッツ州ケンブリッジ、ミシガン州アナーバーで約300人を雇用し、博士号修得者は半分を占める。3拠点では、スタンフォード大学、マサチューセッツ工科大学(MIT)、ミシガン大学といった地元の大学と緊密に連携し、TRIとの正式な関係を維持したいと考える指導者を引きつけている。例えばTRIの自動運転関連研究責任者ジョン・レナード氏は、TRIが多額の研究資金を提供しているMITで教べんを取り続けており、将来性のある人材の募集に努めている。
創業175年の工具メーカー、スタンリー・ブラック&デッカーも、工場運営や供給網管理のために人工知能(AI)や先進解析技術に詳しい科学者や技術者を必要としている。多くの人は移動を嫌うため、同社は14年、事前の調査で適切な人材 が多いことが分かったジョージア州アトランタにオフィスを開設し、約100人のデジタル専門家を雇用した。
これらの専門家は当初、コネティカットの本社に所属したが、製品担当者からの要請もあり、最終的にアトランタ採用組のほとんどを居住地からの遠隔勤務にした。アトランタ・オフィスは現在、新たなデジタル系人材の雇用に乗り出して いる。 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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