アマゾンがニューヨーク市内の主要拠点として初めて作ったスタテン島の配送センターは、同社としては小さめの施設だが、ロボットなどの導入で効率的に在庫を処理して1日100万個以上の商品を出荷でき、都市型eコマース注文履行システムの最新モデルとなっている。
■スペース2割減、取扱量5割増
ウォールストリート・ジャーナルによると、スタテン島の施設はフットボール場15個分に相当する85万5000平方フィートの面積があるものの、ほかのアマゾン配送センターに比べると20%も小さい。しかし、ロボットを従業員数の2倍配置して従来の倉庫より50%多い品物を扱っており、効率的にスペースを使って商品をできるだけ速く消費者に届けられる仕組みになっている。
3月の施設内ツアーで案内役を務めたアマゾン広報のアシュリー・ロビンソン氏は「ここは超コンパクト。だからこそ都会に建設できる。当社はボルティモア、ダラス、シアトルの近郊にも注文履行センターを持っており、すべて同じフォーマットで構築されている」と説明した。
施設の小型化は、いかにオンライン販売が物流網を変えているかを示す最新例だ。大都市圏の近くに在庫を持とうとする各種小売店は、自動化技術を導入し、狭いスペースを有効に使うためシステムを横ではなく上に構築することで、小さな建物で大規模な配送業務を行っている。
■重点がハブから先端に移行
不動産サービス大手ジョーンズ・ラング・ラサール(JLL)によると、100平方フィートを超える大型産業スペースのリース市場は2018年に前年比26.1%縮小したが、10万~50万平方フィートのリースは3.6%の縮小にとどまった。JLLのギラム・キャンベル産業研究マネジャーは「100万平方フィートの大きなハブはすでに埋まり、今彼らはスポークを固めている。これによって人口の多い都市部で迅速に配達できるようになる」と指摘する。
ウォルマートも18年11月、ジェット・コム事業向けのeコマース注文履行施設としてNY市ブロンクスに20万平方フィートの倉庫を開所した。内部は2つの階と中二階で構成され、食料雑貨や日用品の同日・翌日配送を行っている。この施設も、最新技術で社員の作業を支援できるようオートメーションが導入されている。ブロンクスとブルックリン各区では、100万平方フィートに満たない多層物流施設の開発計画が増えている。
■効率的に作業を調整
アマゾンのスタテン島施設の場合、4つの中二階があり、自律型ロボットが労働者のオンライン注文履行を助けている。在庫は棚に保管され、ロボットがそれを取り出してワークステーションの労働者に届けるため、人の移動距離が減る。ロボット専用の区画には人が商品を取る時に必要なラックの列や歩道を作る必要がないため、より多くの商品が保管できる。
この施設では、玩具、電子製品、ごみ袋、ベビー用品といった直径18インチ未満の商品を扱っており、在庫の大部分はほかの場所で事前に仕分けされ、従来のインバウンドドック(入荷場所)や追加商品の収納スペースを排除している。 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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