人工知能や仮想現実といった先進技術を活用した販促が実用化されるなか、デジタル時代以前の旧来手法に回帰する動きが目立ちつつある。オンライン専門の小売店が実店舗を開設したり、デジタル広告から旧来の販促方法へと予算配分を戻したりする例が最近に見られるようになった。そういった戦略は消費者の感覚に訴求するもので、また、記憶効果が高いという科学的な裏付けもある。
フォーブス誌によると、複数の知覚を通して体験したことは記憶に残りやすいことが研究で証明されてきた。短期的な記憶と長期的な記憶の両方を強化すれば、あとで思い出せる確率も高まる。
多感覚的販促戦術は、最近に始まったことではない。覚えるつもりもないのに覚え、ついつい口ずさんでしまう宣伝歌はその好例だ。保険大手のネイションワイド(Nationwide)やチョコレート菓子のキットカット、じゅうたん洗濯サービスのスタンリー・スティーマー(Stanley Steemer)といった大手らをはじめ、多感覚的販促戦術を多用する会社やブランドは枚挙に暇がない。
また、アパレル小売チェーン大手アバークロンビー&フィッチ(Abercrombie & Fitch)は、過去20年ほどにわたって独自の香水を店内で使い、嗅覚が呼び起こす記憶の効果を活用してきた。
オンライン販路を専門に展開してきた消費者向けブランドらはこれまで、販促もオンラインのみで行うことが多かった。その訴求方法はおもに視覚に頼り、聴覚が時々使われる程度になりがちだ。しかし、消費者にとって、商品に触れて試してみることは依然として重要だ。オンライン専門だった靴製造および販売大手のオールバーズ (Allbirds)やスーツケースのアウェイ(Away)、化粧品のグロッシアー(Glossier) らが実店舗へと参入した理由もそこにあった。
また、紙のカタログを復活させているブランドもある。カタログは、消費者の家庭内で比較的長い期間にわたって放置される傾向にある。そのため、ウェブサイトでちらりと見かけたブランドに比べて長く記憶されると言われる。
オンライン販売の代名詞でもあるアマゾンが2018年の年末商戦において、玩具を広告する約70ページの紙のカタログを初めて作成して郵送したことを考えれば、オンラインとオフラインを融合させた多感覚的販促戦術がいかに重要であり広まりつつあるのかうかがえる。
【https://www.forbes.com/sites/forbesagencycouncil/2019/05/09/ai-and-vr-are-here-so-why-are-we-seeing-a-resurgence-of-old-marketing-techniques/#14a20e4026d2】 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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