消費財業界大手はアマゾン時代への対応と生き残りのために三つの分野で投資を強化していることが、セールスフォースの業界調査で浮き彫りになった。同社幹部アフシャー氏が、ZDネット誌に寄稿した。
▽アマゾンによる影響への対応を迫られる
セールスフォースのバラ・アフシャー氏によると、消費財(consumer goods=CG)業界500社を対象に2月に実施した調査によって、下記6つがわかった。
1)アマゾンの登場と支配力によって消費者の期待値(低価格や迅速配達)が高まっているとした企業が78%を占めた
2)消費者の要望に応じた商品を市場に迅速に出すために、企業の99%がD2C(direct-to-consumer、消費者への直販モデル)戦略への投資を進めた
3)小売および販促計画のうち、当初に意図した通りに店舗で実行しているのは48%だった。米CG大手は、計画に年間2000億ドルを投資している
4)55%は、自社顧客データを洞察(有益な知見)に変換することを非常に難しいと感じている
5)82%は、向こう3年間の重点投資対象として消費者データとデジタル顧客サービスを挙げている
6)49%は、小売業者のプライベート・ブランド商品を脅威に感じている
セールスフォースがまとめた報告書「消費財とB2B&B2C関係バトル(Consumer Goods and the Battle for B2B and B2C Relationships)」で明らかにされた。
同調査ではまた、消費者と商品をつなげる方法に影響をおよぼす市場動向や台頭技術として、モノのインターネット(IoT=Internet of Things)や音声アシスタント、人工知能、ラスト・マイル配達、サブスクリプション・モデル、ブロックチェーンも指摘された。
▽直販、顧客サービス、データへの投資で変革を図る
アフシャー氏によると、CG大らは下記三つの分野での戦略的投資で変革を果たそうとしている。
1.D2C販売の強化
D2Cの市場性が高い。ニールセン(Nielsen)によると、米国における高回転消費財(fast-moving consumer goods)市場に占めるオンライン販売の割り合いはわずか5%に過ぎないが、オンライン販売は高回転消費財成長の40%を占める。
また、すぐれた顧客体験を提供できることもD2C販売の強化動機となっている。たとえば、18年に電子商取引サイトを試験的に立ち上げたバーツ・ビーズ(Burt’s Bees)は、期間限定サンプルの提供のように、店舗ではできない体験をオンラインで提供して好感触を得た。
2.顧客サービスへの投資
顧客サービスへの投資は、顧客ロイヤルティに投資することでもある。セールスフォースの調査では、CG大手の82%が、向こう3年間でデジタル顧客サービスへの投資強化を計画していた。
もっとも効率的な顧客サービス提供手段は電話だが、それに続く手段として回答企業の48%がライブチャットを、46%が電子メールを挙げた。
3.データへの投資
アフシャー氏によると、データをみずから蓄積して管理し、かつ効果的に活用できるCGブランドが競争に生き残ると予想されるが、多くのCGブランドにとってデータへのアクセスと活用は困難な課題と位置づけられている。
セールスフォースの調査では、小売業者から得る顧客洞察を完全に活用できている企業は43%だった。大手CGの55%は、自社顧客データを洞察に変えることを難しいと感じ、54%は縦割り型組織による部門間協力の難しさを報告した。
▽人工知能の活用にも注力
消費者と消費財をつなぐ技術において今後5年以内に台頭する革新的技術として、大手CG企業の34%が人工知能を挙げ、22%の企業は、2年以内にそれを実現すると考えていた。
供給網の自動化や、チャットボットを利用した世界的かつ24時間体制の顧客サービス提供にいたるあらゆる分野で人工知能が導入され始めている。CG大手はそれによって、前例のない高い水準でさまざまの洞察を得られる可能性がある。
【https://www.zdnet.com/article/three-ways-consumer-goods-leaders-are-investing-in-the-future/】 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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