麦芽の搾りかすを燃料に〜アラスカのビール会社が光熱費節約

 アラスカ州のビール・メーカーが、ビール製造で使った穀物の搾りかすをボイラーの燃料に再利用してエネルギー消費を減らしている。

 AP通信によると、アラスカン・ブリューイングはこのほど、製造過程で出る大麦や麦芽などの搾りかすを燃料にできるスチームボイラーを180万ドルで購入した。必要な熱・電力のほとんどをこのボイラーで賄えるといい、3月中にシステムが完全稼働すれば、年間約45万ドルに上る光熱費の70%を減らせる見通しとなっている。

 ビールの搾りかすはタンパク質が豊富で、米国のメーカーは通常、近くの農家や牧場に動物の飼料として払い下げることが多い。しかし、同社工場があるアラスカ南部には2011年現在で農家がわずか37軒しかなく、州全体でも680軒にとどまるため、特に1995年に事業を拡張した後は搾りかすの処理が深刻な問題になっていた。

 同社の場合、町と外部をつなぐ道がないため、他州の農家に運ぶ場合は飛行機か船を使わなければならず、輸送コストが非常に高くつく。また、搾りかすは湿っているため出荷する場合は乾かさなければならず、熱を使えばこれもコストがかかる。そうやって売っても大きな利益にはならず、1トン当たりの販売価格60ドルのうち30ドルは輸送費に消える。

 このため同社は、4年前から搾りかすをエネルギー源にする方法を探し始めたが、搾りかすだけをボイラーの燃料にしているビール会社は世界のどこにもなかったため、連邦の地方エネルギー助成制度で得た約50万ドルを使ってノースダコタの会社に専用ボイラーを特注した。

 このボイラーは他の大手メーカーでも導入可能とみられるが、業界最大手アンハイザーブッシュは今のところ搾りかすを長続きするエネルギー源とは考えておらず、廃水をバイオマスにするエネルギー回収システムでボイラーに必要な燃料の9%を供給している。

 アラスカン・ブリューイングは、アルト・スタイル(中濃色の上面発酵ビール)の「アラスカン・アンバー」などを年間15万バレル生産し、近年はテキサス、ウィスコンシン、ミネソタを加えて計14州で販売している。

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