米国の35歳未満の労働者には職場で差別を見たまたは経験したという人が多く、同じ言動でも世代によって見方が違うことが、求人情報グラスドアと世論調査ハリス・ポールの共同調査で分かった。
■意識が高い世代
ウォールストリート・ジャーナルによると、調査はさまざまな年齢層の国内労働者1100人を対象に実施され、5人に3人が職場で年齢や人種、性的指向、性の自認の仕方を理由とする何らかの差別を見たまたは経験したことがあると答えたが、特に18~34歳のグループは他の年齢層よりそう答えた人が多かった。
グラスドアのカリナ・コルテス氏は、現在の若い労働者はハラスメント(嫌がらせ)やディバーシティ(多様性)問題に対する社会の関心が高い時代に育ったため、年長の世代より職場でいじめや差別が起きた時に発見、指摘する傾向が強いと話す。調査では、人種差別を見たという人は若い労働者では半数に上ったが、55歳以上では33%にとどまった。
また性差別を見た/受けたという人は、若い層では52%、55歳以上では30%だった。年齢による差別も、20代と30代初めの年齢層では52%が経験/目撃したと答え、55歳以上の39%を大幅に上回った。
人事管理協会(SHRM)のジョニー・テイラーCEOは、職場でいくつかの世代が交ざり合い、オフィスでのふさわしい行動に関する考え方が変化すると、年長の労働者には普通でも若い労働者には問題と感じる事が出てくる可能性があると指摘する。
■企業は定義を明確に
また近年は、社会から注目された幾つかの事件によってハラスメントの意識が高まり、人事部門に届く社員からの苦情が増えている可能性がある。従業員1000人以上の企業の人事担当者を対象とした最近の調査では、37%が「過去2年はセクハラや差別に関する苦情がそれ以前の2年間より増えた」と答えた。
テイラー氏は「企業は、差別やハラスメントに関する社員教育の導入を急ぐあまり、どんな行動がハラスメントに当たるのかをしっかり教育できていない可能性がある」と指摘。「今の研修プログラムの多くは何がハラスメントで何がそうでないかの説明に時間を割いていない」と話す。
例えば、CEOが若い女性社員をデイトに誘った場合、会社の行動指針には反するかもしれないが、それだけではハラスメントの条件を満たさない。ハラスメントと見なされるのは、女性がそれを断った場合に自己の職務に悪影響が及ぶと感じるか、何度も誘われた場合だけだ。
さらに、人事部門への苦情が増えているからといって、実際に職場のハラスメントが増えているとは限らない。2018会計年度に連邦政府の独立機関である雇用機会均等委員会(EEOC)に届いたセクハラ案件7600件超のうち、56.4%は証拠が不十分として却下されている。
一方でEEOCは、職場のハラスメント全体の75%が報告されていないと見ている。職場での不当な処遇を記録・報告するオンラインサービス、スピークフリー(Speakfully)の共同設立者であるジャナ・モリンCEOは「企業はハラスメントの報告に関して話し合いを始め、それを継続する必要がある。報告の仕組みが不明確な場合、労働者は待つか、全く報告しない可能性がある。最も怖いのは報告しても何も行われないことで、そうなった場合に若い世代は他の世代より組織を離れようとする傾向が強い」と指摘した。 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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