オンライン小売大手アマゾンは、新型コロナウイルスの爆発的流行で病欠の社員が増えているにもかかわらず注文が殺到し、対応に苦慮している。このため、商品の数を減らして消費者に買い物を控えさせるという平時ではあり得ない手法を取っている。
■復旧は2カ月以上先か
ウォールストリート・ジャーナルが関係筋の話として伝えたところによると、同社は3月、消費者に追加購入を促す機能をウェブサイトから外し始め、同じ商品を購入した人が何を買ったかを紹介する「お薦め機能」をほとんど削除した。また「母の日」や「父の日」の特売は中止する予定であるほか、例年7月に行う有料の特典制度「プライム」会員向け大売り出し「プライム・デイ」は無期限に延期。クーポンの提供も減らしている。
ジェフ・ベゾスCEOは最近の株主あて書簡で「アマゾンは必要な物資を必要とする人々に直接届けようと24時間体制で努めている。必需品の需要は依然として高いが、今回の需要の急騰は予測可能なホリデー商戦期とは違ってほとんど警告なしで起きたため、卸元や配送網に大きな問題が生じている」と説明した。このため同社は、衝動買いや追加購入をあおるのではなく、自宅にいる人々がコロナ感染拡大を乗り切る上で必要な商品を重点的に買ってもらえるような手法を導入している。
販売方針の変更に関わった社員の1人は「普通ならできるだけ多く売りたいが、今は手の消毒液とトイレ紙だけでネットワーク全体が満杯で、ほかの需要を満たせない」と話した。社内では上席幹部による「スピード・チーム」が結成され、通常の品ぞろえおよび配達時間に戻れる時期とそのための方法を予測・検討しているが、以前のように全商品を取りそろえて商品を1~2日以内に配達できるようになるには2カ月以上かかる可能性がある。
■外部業者は後回し
同社は3月、外部から自社サイトに客を呼び込むグーグル向けの広告費投入を大部分停止。商品の取り扱いは、清掃用品、ヘルスケア用品、定番の食料品といった必需品を優先するという思い切った措置を取った。この結果、コロナ関連の買い物需要に合わない商品の入荷を一時的に停止し、同社の売り上げの58%を占めるサードパーティー・セラー(外部販売業者)の不満が高まっている。
必需品以外の販売を再開できるよう、アマゾンは人員を10万人増やし、さらに7万5000人を雇用する計画を発表しており、約5億ドルを投じて倉庫や配達作業員の賃上げを行う予定。少しでも倉庫の負担をなくすため、外部業者が販売する商品をアマゾンの担当者が取りに行く「Ship With Amazon」プログラムも停止し、最近は外部業者に「Fulfilled By Amazon」プログラムを使わず自社で商品を発送するよう奨励している。
ただ、一部の外部業者は収入のほぼすべてをアマゾンでの販売に依存しているため、優先順位を下げられることへの苦情が噴出している。(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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