ロックダウン(都市封鎖)が解除されて経済活動が再開するのに伴い、多くのビジネスが新型コロナウイルス関連の訴訟を避けるため、免責のためのお断り(disclaimer)を掲示したり、従業員や客に賠償請求権放棄書(waiver)への署名を求めたりしている。
■訴訟を回避
ロイター通信によると、これは美容室から娯楽施設、証券取引所、結婚式のカメラマンまで全米のさまざまな事業者に見られる動きで、人々に施設の利用やサービスに伴うウイルス感染リスクを理解して受け入れるよう求めている。
ただし専門家によると、こうした署名、書式の用意、ウェブサイトへの警告掲示といった措置も、「滑りやすい床で転んでけがをした」「壁の塗料に含まれた鉛成分によって病気になった」といった場合と同様、過失による損害賠償請求を妨げることはできない。
事業者側が客の感染症を引き起こしたと証明することは難しいと思われるが、今は双方の懸念が非常に強いため、免責を求める措置はすぐにニューノーマル(新しい常識)になる可能性がある。すでにオクラホマシティのYMCA施設、アリゾナの不動産業者、ペンシルベニアの自動車レース場、ニューヨーク証券取引所などが、施設内での感染に対して責任を取らない姿勢を表明している。
■客も協力的
モンタナ州の弁護士ペイジ・グリフィス氏は、ビジネスオーナーがオンラインで購入して必要に応じて書き換えられる新型コロナ関連の権利放棄書を作成した。これはすでにメイクアップ・アーティストや結婚式の写真撮影などのイベント業界の労働者に使われている。
フロリダ州ペンサコーラのヘアサロン「10th Avenue Hair Designs」は、5月11日に業務を再開して以来、コロナ感染の症状がなく過去30日間に感染率の高い「ホットスポット」に行っていないことを宣誓する書式に署名するよう客に求めている。店のオーナーは「店を選んで入ってきた客から店や従業員の責任を問われたくない」と語った。
テキサス州サンアントニオ近郊のフィットネスジムでも、従業員が入り口で利用者の手足に除菌剤を吹きかけ、権利放棄書への署名を求めている。署名した男性利用者の1人は、3月に症状が出て、後に抗体検査でウイルスに感染していた可能性が高いことを知ったが「そういうことがなかったとしても喜んで署名する」と話した。
■安全保証は不可能
大企業も同様の対策を取っている。メディア・娯楽大手のウォルト・ディズニーはウェブサイトで、7月11日に再開するフロリダ州オーランドの遊園地に来る客に、重い疾患と死亡に関するリスクを掲示している。
ニューヨーク証券取引所を所有するインターコンチネンタル・エクスチェンジ(ICE)や商品取引所のCMEグループも、入場者に権利放棄書への署名を求めている。CMEのテリー・ダフィーCEOは「トレーディング・フロアへの入場を選択したトレーダー、職員、その他のスタッフの安全を保証できない。リスクがあり、リスクはワクチンや他の治療法ができるまで続く」と話している。 (U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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