通勤の習慣途絶え、米国人は多額を節約

新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、多くの業界で通勤という習慣が途絶えている。毎日長距離を移動しなくなったことで、多くの米国人はさまざまなコストを節約していることになる。

■前年同月比370億マイル減

CNNによると、連邦道路管理局(FHA)が発表した2020年6月の全米自動車走行距離は、前年同期比で実に370億マイル減少した。通常、自動車走行距離は休暇シーズンの夏にピークを迎えるが、コロナ禍の今年は例年と様相が異なっている。

通勤の消滅は、労働者にとってさまざまな経費削減につながる。国際人材マッチング・ウェブサイト大手アップワーク(Upwork)の調査によると、かつて自動車通勤していた労働者で現在は在宅勤務になった人々は、合計で1日7億5800万ドルの出費が抑えられている。米国でパンデミックが始まってから数カ月たっている現在、その数字は累積で900億ドルに達する。

アップワークの主任エコノミスト、アダム・オジメック氏は、「ガソリン代、自動車の維持費、さらには渋滞、汚染といったマイカー通勤から生じる社会の負荷がこの節約額に含まれる」と説明する。

ただ、この計算で最も重要なのは時間だ。時間の価値を数字に置き換えるのは難しい。しかし、オジメック氏が引用した運輸省の推計によると、米国人1人が自動車で通勤する場合、1時間当たり平均で12ドル50セントかかる。

これを米国人の通勤時間に当てはめたのが上記の出費抑制額ということになる。オジメック氏によると、2018年の米国人の通勤時間は1人当たり1人平均54分20秒だった。通勤時間は数十年にわたって延長が続いている。ニューヨーク市やサンフランシスコのベイエリアのように生活費が高く通勤者も多い巨大な求人市場が存在するため、通勤時間の平均値は縮小していない。

■郊外への人口移動は必至?

長期にわたる在宅勤務が今後も長く続いた場合、労働者が最も恩恵を受ける都市はどこか? アップワークによると、ペンシルベニア州イーストストラスバーグはニューヨーク都市圏にも州内フィラデルフィアにも近い町であり、在宅勤務の時間が最も伸びている。これに続くのが、ニューヨーク・ニューアーク・ジャージーシティ地域とワシントン・アーリントン・アレキサンドリア地域だという。オズメック氏は「生活費が高い地域から安い地域への人口移動が起きると確信している」と話す。

在宅勤務の恒常化は、本来のオフィス環境を支えている地元経済にとっては好ましくない。在宅の労働者は交通費を使わず、朝のコーヒーやランチも購入しない。これは、オフィスを支援するインフラを構成する職種を危機にさらすことになる。

(U.S. Frontline News, Inc.社提供)

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