高級百貨店サックス・フィフス・アベニューから7カ月前に分離・独立した通販会社「サックス」はこのほど、数十台の自律型ロボットを使うハイテク倉庫から商品の発送を始めた。
■処理速度は人の手の2倍
ウォールストリート・ジャーナルによると、サックスは新型コロナウイルス禍の中でも過去1年間にオンライン通販などのデジタル機能を強化した小売店の1つ。倉庫業務の請負大手GXOロジスティクスが運営するロボットの集団や先進技術を備えた施設を使って、急増する通販需要への対応を図っている。
ペンシルベニア州ミドルタウンにあるGXOの施設(40万平方フィート)は、サックスのほかにも複数の企業にサービスを提供しているが、サンディープ・サクハカー最高情報責任者(CIO)によると施設の作業スペースの半分以上をサックス向けが占め、サックスが主要テナントのようなものだという。
サックスが使っているコボット(人間との協業が可能なロボット)は、高さが約4フィート、人が探す商品の画像を表示するコンピューター画面が付いており、車輪で倉庫内を動き回る。店舗の商品カタログで訓練されたソフトウェアを使い、次々と入る注文と倉庫内の商品の場所を瞬時に照会して、作業員を保管場所に案内し、作業員はそこから商品を取って適切な発送区画に届ける。このシステムは、人の手だけの場合に比べ平均2倍の速度で商品を動かせるという。
■年末商戦に向け体制強化
年末商戦を控えたサックスのようなオンライン小売業者にとっては、この種の作業速度がとても重要になる。同社のナ・リー上席副社長(eコマース配送およびロジスティクス担当)は「ミドルタウンの施設で注文履行ネットワークを拡張するという決定により、年末の繁忙期を過ぎても高まる消費者需要に対応できるようになる」と見ている。
同社はこれまでも自動の注文履行ツールを使っていたが、積極的な成長戦略を支えるために高度なデジタル技術の導入を促進するという計画の一部として、今回の最新施設への移転を決めた。
サックス・フィフス・アベニューを傘下に置くカナダの小売り大手ハドソンズ・ベイ(HBC)は3月、サックス・フィフス・アベニューの通販事業を別会社サックスとして独立させると発表。投資会社インサイト・パートナーズに少数株式を売却した。当時の通販事業の年間売上高は約10億ドルだった。サックスは新規株式公開(IPO)も計画して、約60億ドルの評価を目指している。
コロナ禍は通販市場の急成長に寄与し、百貨店全体のオンライン販売を急増させている。全米小売業協会(NRF)は6月、2021年の米オンライン・無店舗販売は前年比23%増加の約1兆1300億ドルに達するとの予想を発表している。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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