電気自動車(EV)市場への移行に伴い、自動車メーカーや大手サプライヤーは北米全体に大規模な投資を計画しているが、地域産業が長年内燃エンジンに依存してきたミシガン州デトロイト周辺では、中小企業や起業家も新しいテクノロジーに便乗した商機を模索している。
■電池の過熱問題に挑む
オートモーティブ・ニュースによると、アナーバーのパシフィック・インダストリアル・ディベロップメント(Pacific Industrial Development)は、1992年に中国からのレアアース輸入業者として始まり、今では自動車や石油化学産業向け触媒化学製品の大手に成長しているが、最近は新分野として、EV用電池の過熱や出火の問題に取り組んでいる。
同社が開発しているのは、電池の発火を防ぐため正極と負極の間に配置する陶磁器に似た難燃性材料。11月にはアナーバーに200万ドルで先進電池素材研究所を開設し、博士級の学歴を持つ6人の社員が研究に取り組んでいる。
創業者のウェイ・ウー氏は数年以内に2億ドルの利益が出る可能性に期待している。氏によると、電池セル(単体)やパックの供給市場には競争相手が多いが、先進素材に力を入れる企業は少なく「うちは先行するプレイヤーの1人だと思う。この地域ではまだ限定市場だ」と話している。
■電池の製造
オライオン・タウンシップのアメリカン・バッテリー・ソリューションズ(American Battery Solutions)は、電池の製造市場に参入した新興企業で、2019年の開業時に12人だった従業員は現在、200人に増えている。22年は売り上げ5000万ドルを見込んでおり、28年までに10億ドルに増えると予想している。
親会社の投資ファンドKCKグループは、これまでアメリカン・バッテリーに2億ドルを投資した。同社の売り上げの大部分は、バス、配送トラック、産業機器用および電力会社の蓄電施設用の電池納入契約から生まれている。州内にある12万平方フィートの工場では電池の試作品製造とテストを、オハイオ州の18万平方フィートの工場では量産を行っている。22年にはバスやトラック向け電池パックの本格量産を開始する予定で、ミシガンで100人の新規雇用が必要になる。サブハッシュ・ダールCEOは「市場はまだ全然混んでいない。必要なのは、サプライヤーとの部品供給契約、顧客、そして両者をつなぐノウハウ」と話している。
■充電インフラ
一方、デトロイトの起業家ウィリアム・マッコイ氏は、売上高が21年の176億ドルから28年までには1120億ドルに成長すると予想されるEV充電器市場に商機があると見ている。関連事業を始めるため、不動産取引や自動車販売の仕事を辞め、2年前にワシントンDCからミシガンに引っ越し、約9000ドルを投資してEV充電器の電気工事請負およびサービスの会社カレント・ディーラーズ(Current Dealers)を設立した。少数の社員で過去6カ月に100基以上の住宅用充電器を設置し、約25万ドルを売り上げており、自動車販売店と食料品チェーン店の工事請負契約を狙いながら、22年は売上高最大1000万ドルを目指す。
(U.S. Frontline News, Inc.社提供)
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