先進バイオ燃料は採算取れず 〜開拓企業の元CEO、事業形態の破綻を指摘
- 2013年5月8日
- 環境ビジネス
先進的バイオ燃料の市場開拓に取り組んできた化学者のアラン・ショー氏は、「ガソリンより安い燃料を食物以外の生物資源から作るのは無理」と表明し、業界から正式に身を引いた。今後は、天然ガスを使った燃料の開発に専念するという。
ブルームバーグ・ニュースによると、同氏は、米国で最初に上場した先進的バイオ燃料開発企業コデクシス(Codexis)の元最高経営責任者(CEO)で、現在はカリスタ・エネルギー(Calysta Energy)のCEOを務める。
「穀物のかすや木くず、スイッチグラスといった植物材料からガソリンに代わる安い燃料を作ることは不可能。この事業形態は破綻している」と同氏は述べた。
コデクシスは国際石油大手のロイヤル・ダッチ・シェルの支援を受けて2006年に設立され、シェルから6年間で3億7500万ドルの資本を投入されたが、新燃料事業を2012年8月に閉鎖し、現在は製薬事業に切り替えている。同社の先進バイオ事業を率いたショー氏は、2012年2月にカリスタに移籍し、現在、天然ガスを使った燃料の開発に取り組んでいる。
米国では新たな掘削技術による「シェール革命」で天然ガス価格が1990年代の水準まで下落したため、エネルギー分野の投資家の興味は、従来のバイオテク企業からカリスタのような化石燃料基盤の新ベンチャーに移っている。
シルリア・テクノロジーズ(Siluria Technologies)のエドワード・ディニーンCEOも、2013年1月にバイオ燃料会社LS9のCEOを退任し、現在は、マサチューセッツ工科大学(MIT)が開発したメタンをエチレンに変換する技術の商業化に取り組んでいる。エチレンは世界で最も価値の高い化学商品で、年間売上高は1750億ドルに上り、燃料の生産にも使える。
ショー氏によると、先進的バイオ燃料の開発にはいくつもの障害があり、なかでも最大の問題は、原料として必要なバイオマスの生産が予想したほど簡単でも安くもないことだ。エタノール1トンを作るのに約6トンもの原料が必要になる。現在も営業するジーヴォ(Gevo)は2012年9月に、生産量が予想を下回ったため主力工場を休止しており、アミリス(Amyris)やソラザイム(Solazyme)も収入のほとんどを利益率の高い化学製品の販売から得ている。
植物の糖分を油に変える藻を開発したソラザイムのジョナサン・ウォルフソンCEOは、「先進バイオ燃料の研究は始まったばかりで、開発には時間がかかる」と話し、利益を出せないという考えに反論する。
それに対しショー氏は、「微生物に有機物を消化させ炭化水素を作るという先進バイオ燃料の基本構想は正しい。問題は原料に植物を使う点にある」と説明した。
この記事が気に入りましたか?
US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします
最近のニュース速報
-
2023年1月31日 アメリカ発ニュース, 環境ビジネス, 米国ビジネス, 自動車関連
加州、ゼロ排ガス交通インフラ整備に29億ドル
-
デルタ航空、機内ワイファイ・サービスを2月から無料化 ~ 競争力強化に注力、高単価客の獲得に照準
-
2023年1月26日 アメリカ発ニュース, 環境ビジネス, 米国ビジネス
小売大手ら、2023年に食品廃棄削減に注力 ~ カギは「逆物流」技術、追跡と分析で廃棄回避を強化
-
2023年1月23日 アメリカ発ニュース, 世界のニュース, 環境ビジネス, 米国ビジネス, 自動車関連
自動車分野の技術革新、実用化には時間が必要
-
2023年1月18日 アメリカ発ニュース, ハイテク情報, 米国ビジネス
機械学習の普及をさらにあと押しする潮流 ~ AWSの人工知能責任者、6大要因および傾向を特定
-
2023年1月16日 アメリカ発ニュース, ハイテク情報, 環境ビジネス, 米国ビジネス
仕事や暮らしに革新をもたらすデジタル・ツインの活用法 ~ フォーブス誌、専門家15人の見方を紹介
-
2023年1月12日 アメリカ発ニュース, ハイテク情報, 米国ビジネス
ウォルマート、ロブロックスと提携しメタヴァースに参入 ~ Z世代向けに仮想空間体験を提供へ
-
小売店、オンライン注文処理もこなす実店舗が増加
-
2023年1月5日 アメリカ発ニュース, 環境ビジネス, 米国ビジネス, 自動車関連
電気自動車、大衆市場に食い込めるか
-
米年末商戦の小売売上高、7.6%増を記録 ~ インフレにもかかわらず予想以上に成長