日航、エアバス56機購入へ〜ボーイングの独占終わる

 日本航空(JAL)が最新機購入でボーイングでなくエアバス製のA350を選んだことは、ボーイングが独占してきた日本の航空機市場の転換として注目される。

 ウォールストリート・ジャーナルによると、これまでJALとボーイングは何十年にもわたって極めて親密な関係を維持し、JAL所有機の70%以上をボーイングが占め、JALが世界中のどの航空会社より多くのボーイング747を運航した時期もあった。

 日本航空業界でのボーイングの影響力は、第2次大戦後の復興期までさかのぼる。三菱重工や川崎重工のような日本の企業が戦後急速に事業を再建できた背景には、米軍や米企業の支援があり、ボーイングの戦闘機やヘリコプターの部品を作るためのライセンス契約が大きな助けとなった。

 その後ボーイングが商業用旅客機市場に参入すると、JALと全日本空輸(ANA)が次々と発注して関係を強化。特に747「ジャンボジェット」はJALを代表するモデルとなり、通算で100機以上購入している。さらに1970〜80年代は、貿易摩擦の解消のため日本政府も米国からの航空機購入を奨励したため、日本はボーイングにとって最大の海外市場となった。

 一方でボーイングは、日本のメーカーに大量の部品を発注し日本の雇用創出にも貢献していたため、日本での地位は盤石となっていった。しかし近年は、規制撤廃や経済力シフトの影響が出てきたほか、エアバスも地道に日本の部品業者を増やして雇用への貢献度を拡大し、今ではA350の部品の約20%は石川島播磨重工業(IHI)や三菱重工のような日本のサプライヤーが供給している。

 また日本のメーカーも、エネルギー効率の高い地域旅客機の独自開発を進めているため、ボーイングと競合する可能性も生まれている。

 保険大手AIGの航空ファイナンス部門インターナショナル・ファイナンスのヘンリ・コプロン最高経営責任者(CEO)は「JALがA350を発注したことよりも、ボーイングがこれほど長く独占体制を維持してきたことの方が驚き。日本の航空業界は今後長くボーイングとエアバスの競合激化の恩恵を受けるようになる」と見ている。

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