医療情報の窃盗が増加〜記録の信頼性揺るがす恐れ

 個人情報を盗んで不正使用するID窃盗やID詐欺のうち、他人の健康保険証やメディケア番号を使って治療を受けるなど特に医療分野の不正が増えていることが、ポネモン研究所(ミシガン州)の最新調査で分かった。

 ダラス・モーニング・ニュースによると、2013年の医療分野のID窃盗は、31万3000人分に上ると推定される。過去数年間では延べ184万人となっているが、全米で治療記録のデジタル化が進む現在、ハッカーが医療データベースへの侵入に成功すれば被害の数字はまたたく間に倍増する恐れがある。

 国内の医療機関に対するハッキングは過去4年間で56件に上り、12年にユタ州で起きた事件では78万人の情報が入ったメディケイド記録が標的にされたが、容疑者はまだ特定されていない。

 医療機関や保険会社、IT企業などでつくる医療詐欺対策連合(MIFA)のロビン・スレード氏は「医療ID窃盗は治療を妨げ、死にもつながる。本人と別人とでは血液型やアレルギーが異なる可能性があり、医療記録の信頼性が損なわれる恐れがある」と警告する。

 IDの不正使用は軽い動機で始まることが多い。ポネモン研究所のラリー・ポネモン所長によると、IDを盗まれた人の約3分の1は、保険に入っていない家族や友人に情報を漏らしたことを認めている。人助けを目的に犯す罪と言えなくもないが、治療の結果はID所有者の医療記録として残るため、将来の医療に複雑な影響を与え、高い金のかかる訴訟問題にもなり得る。

 医療機関の関係者が金目当てにデータを闇市場で売りさばく例もあるが、連邦当局や保険会社の最大の懸念はやはりハッカーだ。12年にはヒューストン大学のファイルから患者7000人分の個人情報が盗まれ、10年にはテキサス大学アーリントン校の保健事務局で生徒2万7000人分の氏名、住所、診断コード、処方記録などが影響を受けた。

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