スマート・メーターで農業漏水を検出 〜 灌漑ポンプの状況分析で節水と節電
- 2013年12月23日
- 環境ビジネス
新興企業のパウワウ・エネルギー(PowWow Energy)は、電力のスマート・メーターを使用して灌漑用水の漏水を探知するシステムを開発している。市場規模430億ドルに上るカリフォルニア州の農業に新たな価値をもたらす可能性がある。
グリーンテック・メディア誌によると、同社の概念では、配水管に検知器を導入する必要はいっさいなく、水を送るためのポンプが使う電力のデータをスマート・メーターから取得して分析することで、灌漑用水がどこで無駄に失われているかを正確に把握できるという。
パウワウ(シリコン・バレー拠点)、過去6ヵ月間にわたって、同システムを各地で試験運用してきた。11月には「クリーンテック・オープン」コンテストで優勝し、20万ドルの賞金を獲得したほか、最近になってエンジェル投資家からも出資を受けた。
設立者のオリビエ・ジャーファニョン氏はフランス出身で、カリフォルニア大学サンタ・バーバラ校を卒業。通信サービス業界で15年過ごし、通信網診断のためのデータ分析を手がけた後、環境技術に目を向けるようになった。オーストラリアやカリフォルニアでの仕事経験を経て、水という貴重な資源の無駄を防ぐ技術が水道業界に必要だという確信を深めた。
同氏はそれと同時に、「水道業界には、データ共有のための標準がほとんど存在しない」ことも学んだと話す。また、農場や牧場はたいていの場合、多くの資金を持ち合わせておらず、検知器の設置に投資する意欲が薄いことも要素の一つだという。
カリフォルニア州では、農業用の水道ポンプが使用する電力は、総電力使用量の約8%を占める。そのため、配水の非効率は、水だけでなく電力の無駄遣いにもつながる。
それらの要因を検討した結果、「新しい検知器を設置する必要がないシステム」「電力会社からデータを取得するだけでよいシステム」という発想に至ったと同氏は話す。
これまでの試験では、パウワウの分析によって大規模の漏水がいくつか見つかり、同システムの有効性が確認された。漏れ出した水が土壌表面に表れるまでに数ヵ月を要していたであろう漏水や、肉眼ではとても確認されない漏水など、分析しなければ発見し得なかった状況が含まれていた。
最初に見つかった漏水は、自然に見つかるまで放置しておけば1万2000ガロンの水と800キロワット時の電力の無駄につながった可能性があるという。
灌漑の非効率を発見することは、節水だけでなく、作物や家畜の保護も意味する。農場や牧場に対しては、後者の利点を訴えたほうが説得力が高まる場合がある、とジャーファニョン氏は考える。
パウワウの次なるステップは、スマート・メーター網全体にわたってデータをさらに収集し、ポンプの情報と綿密に結び付けていくことだ。そのためには、導入顧客が農場内で区域ごとにポンプの運転を止めたりして、電力データとすり合わせていく必要がある。
その基礎データを確立すれば、人工知能技術を用いたソフトウェアで詳細に分析することが可能になる。
「どこで漏水が起きているかを100%把握することはできないかもしれないが、ある程度の区域を突き止められる」「おそらくは1エイカー以内ぐらいまで絞り込めるだろう」とジャーファニョン氏は言う。
パウワウは10月に、サンディエゴ・ガス&エレクトリックの「グリーン・ボタン・コネクト」制度に参加した。スマート・メーター設置済みの電力顧客のデータを取得できるようにする制度だ。
パウワウは、サザン・カリフォルニア・エディソンおよびパシフィック・ガス&エレクトリックの同様の制度にも今後参加する計画だ。
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