2014年に注目される米環境政策 〜 エネルギー事業を左右する5つのカギ

 グリーンビズ誌では、米国の環境政策分野における2014年の注目点として次の5つを指摘した。

 2013年は、オバマ大統領が「クライメート・アクション・プラン(Climate Action Plan)」を発表し、新たに建設される火力発電所の二酸化炭素排出量に対する制限を提案した一方で、米国商工会議所や環境団体から幅広い支持を集めたエネルギー効率化法案は、連邦議会を通過できなかった。

 同誌によると、2014年は、画期的な新しい展開が起きる可能性は低いかもしれないものの、なおも進歩の期待される分野はいくつかある。

1)EPAの発電所基準の拡大

 環境保護庁(EPA)は2013年10月に、既存の発電所を対象とした二酸化炭素排出基準を2014年に導入する計画を発表した。新規に建設される石炭およびガス火力発電所に対しては同様の規制がすでに提案されたことから、既存の発電所に対しても規制が提案されれば、効果がさらに拡大する。

2)「キーストーンXL」の最終決定

 「キーストーンXL」パイプラインの建設計画を認めるかどうかについての最終決定が、2014年中に下される見通しだ。多くの環境団体は、パイプラインに投資するよりもクリーン・エネルギーに投資したほうが米国の未来にとって有効だと考えている。オバマ大統領はこれまで建設反対の姿勢を取ってきたが、それを維持するかどうかが注目される。

3)クリーン・エネルギー国債法案

 クリーン・エネルギー分野の開発資金を調達するための国債発行にかかわる「クリーン・エネルギー・ビクトリー国債法(Clean Energy Victory Bonds Act)」という法案が、あらためて議会に提出される見通しだ。第二次世界大戦中の戦時資金を調達したヴィクトリー国債に似ており、一般市民が最低25ドルからの国債を購入できる。

4)国の再生可能エネルギー利用基準設定

 エネルギー総利用量に占める再生可能エネルギーの構成比に対して何らかの基準を設けている州は、現在38州ある。しかし、今のところ国レベルの基準はなく、イギリス、中国、ポーランドの後塵を拝している。

 現時点で二つの法案が上院に提出されており、いずれも2025年までに25%を基準としている。国レベルの基準を設定する法案は2010年にも審議されたが不成立に終わっており、現在の法案の成立見通しも低い。が、何らかの基準が必要だという認識は広まりつつある。

5)自然災害への備えの強化

 気候変動の影響を受けて大型ハリケーンといった大規模自然災害の発生が増えているように見受けられる。海抜の高まりによって、沿岸部の高波も増える可能性がある。

 そういった自然災害への備えを強化する自治体の取り組みを支援するための法案「ストロング法(STRONG Act)」が、民主・共和両党の議員から提出されている。この法案の成り行きも、2014年に注目されるところだ。

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