インメモリー電算に懸けるSAPの成長戦略 〜 「ハナ」人気をてこ利用

 業務用ソフトウェア大手の独SAPは、投資家向けイベントにおいて同社の成長戦略を発表し、同社のビル・マクダーモット共同最高経営責任者(CEO)は、インメモリー電算プラットフォームのハナ(HANA)を中心とした成長戦略構想を説明した。

 コンピュータワールド誌によると、SAPでは、クラウド電算、データベース、モバイル、分析、そして企業向けアプリケーションという5つの製品分野を中核事業と位置づけ、それらを合わせた販売高を2020年までに3500億ドルに拡大させる目標を掲げた。

 SAPが特に注力するのは、これまで主力事業だったソフトウェア・スイートから、サクセスファクターズ(SuccessFactors)買収によって獲得したサース(SaaS=Software-as-a-Service)事業や、そのほか広範の企業向け電算ソリューションまでをハナに対応させる戦略だ。

 ハナは元々、従来のデータベース・ソフトウェアによるデータ処理を高速化するプラットフォームとして開発されたが、第三者業者によるさまざまな開発ツールやアプリケーション・サービスの登場によってSAPの中核事業に成長し、現在では、SAPの成長を支える製品になった。

 SAPの描く予想図には、顧客企業の仕様環境の統合に加えて、分析や業務処理過程の合理化も含まれる。クラウド事業の大幅拡充はその事業展開にとって必須となる、とマクダーモット氏は述べた。

 ハナの導入企業は現在、約3000件とみられ、ハナのプラットフォームは1300件のデータベースに移植されている。また、ハナに関連した技術を開発する新興企業の数は1200社にも上る。

 ハナは、発売されてからしばらくの間、あまりの高額のため導入企業数が伸び悩み、SAPでは導入企業数を公表しなかった。しかし、生態系の拡充と品質の良さから、導入に踏み切る大企業が増加した。

 SAPではハナの人気と販促力、生態系拡充といった追い風に乗って、ビジネス・スイート(Business Suite)を2013年に市場投入した。同社によると、約800社がビジネス・スイートを購入している。

 購入した一社の加工食品大手コナグラ・フーヅ(ConAgra Foods)のIT責任者は、ハナ・プラットフォームを高く評価している。

 ただ、SAPは、顧客企業への課金制度の変更という課題に直面している。

 SAPに限らず、オラクル(Oracle)やマイクロソフト(Microsoft)といったソフトウェア大手は従来、ソフトウェアの高額のライセンスおよび保守管理サービスを販売するという収入モデルで高利益の事業を確立してきた。

 しかし、クラウド電算サービスでは、ライセンスや周辺サービスの販売による収入がなくなり、その代わり、従量課金制や定期定額利用料という課金体系に移行することから、従来事業とクラウド事業の両立と利益率低下回避という課題の解消に迫られている。

 SAPとしては、将来的に定額料金を一定期間で徴収する「購読型」への全面移行を想定しているが、そのためには適切な料金体系を設定する必要があるため、簡単ではないと指摘される。

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