格差問題と闘うアップルの元幹部 〜 シリコン・バレーと貧困層の架け橋に

 サンフランシスコでは、繁栄するシリコン・バレーと取り残された住民との所得格差が広がっており、アップルの元幹部が両者の架け橋となって状況を改善しようと努力している。

 ウォール・ストリート・ジャーナルによると、日系二世のジェイムズ・ヒガ氏は、スタンフォード大学を卒業後、カメラマンをしていた1984年に撮影が縁でアップルのスティーブ・ジョブズ創設者と知り合って同社に入社した。

 ヒガ氏はそれ以降、ジョブズ氏の側近として働き続け、アイチューンズ・ストアーの開発に関わり、信頼の厚い助言役を務めてきたが、ジョブズ氏が亡くなった後、2012年夏にアップルを退社した。

 ヒガ氏は現在、インデックス・ベンチャーズで新興IT企業に助言しながら、地元の所得格差拡大の是正に取り組む非営利活動に力を入れている。

 具体的には、年間約1200万ドルの助成金を地元のために使う非営利組織フィランソロピック・ベンチャーズ・ファウンデーション(PVF)の常任理事を務め、IT業界と慈善事業業界が協力してベイ・エリア内(サンフランシスコ湾岸)の困窮地域を支援する体制整備に多くの時間を割いている。

 地元住民の多くは、IT企業が巨額の利益を上げているのに格差拡大問題になぜもっと積極的に取り組まないのかと思っている。

 人身売買と戦う非営利組織ノット・フォー・セールとその姉妹会社のジャスト・ビジネスは先日、地域雇用促進を図るインベンション・ハブをオープンしており、創設パートナーであるヒガ氏もそこに入居した。PVFはそれらの団体を支援している。

 7000平方フィートの建物内では、地元の人身売買被害者に職業訓練を施す6ヵ月間の研修プログラムを提供している。

 それらの団体は現在は、バリスタの育成クラスと、企業研修生になるのに必要な職能を身につけるクラスを開催している。ジュニパーやセールスフォースといったシリコン・バレー大手のほか、求人サービス大手やコーヒー大手は、プログラム修了者に研修機会を提供することに合意している。

 ヒガ氏は、IT業界との定期的な地域支援会合を設け、立ち退き件数の増加といった問題への対応も視野に入れている。同氏はその一環として、エド・リー市長やソフトウェア会社ゼンデスクとの会合を予定しており、街の再活発化策をはじめ、ホームレスと援助サービスをつなぐ新しいスマートフォン・アプリケーション「リンクSF」の発表を計画している。

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