大規模データと従来技術は共存できるか 〜 テラデータにみる今後の行方
- 2014年4月8日
- ハイテク情報
大規模データ(Big Data)関連市場の成長期待が注目されるようなってからすでに久しいが、新興企業のクラウデラ(Cloudera)が先日、9億ドルという巨額資金を調達したことに示されるように、同市場への期待はまだ健在だ。
その一方で、大規模データ関連システムの普及がレガシー(従来型、既存)データ管理技術の企業を市場から追いやることで同業界の構造が大きく書き換えるのではないかという見方が浮上している。
今後の見通しが懸念されるレガシー企業の一つはテラデータ(Teradata)と指摘される。1979年に設立された同社はこれまで、データ・ウェアハウス大手として君臨してきたが、急速に普及しつつあるハドゥープ(Hadoop)システムがテラデータの技術に取って代わるのではないかという憶測が飛び交い始めた。
ニューヨーク・タイムズによると、テラデータの研究開発部門テラデータ・ラブズを率いるスコット・グノウ社長は、そういった憶測を真っ向から否定し、「すべてが一つの技術でまとまるというわけではない」と述べ、テラデータ独自の技術を必要とする市場が十分にあると反論する。
実際、テラデータを含むレガシー企業が新興の大規模データ企業にすぐさま取って代わられることはないという見方も根強い。その状況は、IBMのメインフレームが、格安のマイクロプロセッサーの登場によって終焉を迎えると言われたのに似ている。しかし、メインフレーム市場は健在だ。
ただ、レガシー・システムが今後も安泰ということにはならない。
レガシー企業にとって新技術の台頭はそれほど問題ではなく、価格の下落が最大の脅威だ。新技術の登場と普及によって競争が激化することで、レガシー企業はそれまで持っていた価格決定力を失うためだ。
IBMのメインフレームの場合、かつては粗利益率が非常に高かったが、マイクロプロセッサーが普及したことで価格競争に対応させられ、一時は打撃を受けた。
そこで、テラデータのデータ・ウェアハウス事業もメインフレームと同じ運命をたどるかどうか、という疑問が浮上する。
技術コンサルタントのリチャード・ウインター氏はそれについて、「ハドゥープは、テラデータのデータ・ウェアハウス技術に取って代わることはない」と断言する。
ウィンター氏によると、高位のデータ・ウェアハウスが保管するデータは、企業にとって最も価値のある顧客情報や商品情報で占められ、数年間で数百万回も使われるデータが集められていることから、ハドゥープのシステムと競合しない。
ハドゥープは、大量のデータを一度に素早くかつ安く保存し管理することに長けている。また、ハドゥープが得意とするのは、頻繁に呼び出されるデータではないため、データ・ウェアハウス・システムのような重要度がない。
レガシー企業も大規模データ機運の高まりを静観しているわけではない。テラデータは、ハドゥープを提供する新興企業のホートンワークス(Hortonworks)と提携しており、ハドゥープ製品の提供に事業を拡張した。
テラデータはホートンワークスとの提携を受けて、ダッシュボード・ソフトウェア「クエリー・グリッド(Query Grid)」を7日に発表したばかり。同ソフトウェアは、従来型データ・ウェアハウスとハドゥープ・システムで管理される両方のデータにアクセスできるようにした製品だ。
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