メルク、ピアー・プラスを買収 〜 省エネ効果をもたらす窓ガラスのメーカー

 製薬大手のメルク(Merck)は、エレクトロクロミック・ガラス開発を手がけるオランダの新興企業ピアー・プラス(Peer+)を買収する。買収金額を含む詳細は明らかにされていない。

 エレクトロクロミック・ガラスは、電荷を印加することで色を変えられるガラスで、省エネ効果をもたらす窓ガラスとして注目されている。

 大手ガラス・メーカーは、その分野の技術を手がける新興企業との戦略提携や買収に積極的に出ている。米国のガーディアン・インダストリーズ(Guardian Industries)は2012年にヴュー(View、旧社名=Soladigm)と戦略提携を結び、フランスのサンゴバン(Saint-Gobain)は2012年にセージ(Sage)を買収した。

 グリーンテック・メディアによると、製薬会社による同分野への進出は異色に見えるかもしれないが、メルクは、液晶に使われる素材の世界最大のメーカーであり、エレクトロクロミック・ガラスの窓ガラスを超えた用途の潜在性にも関心を抱いているとみられる。

 ピアー・プラスのアンディ・カミング最高経営責任者(CEO)はかつて、メルクで液晶開発に取り組んだ有機化学研究者だ。同社の中核製品は「スマート・エネルギー・ガラス(Smart Energy Glass)」と呼ばれ、太陽光エネルギーを利用して窓の明るさを変えることができる。

 窓に当たる太陽光エネルギーを利用できるという自家発電的な側面が、スマート・ガラス窓としては目新しい。これまでの製品のほとんどは、太陽光に反応するが制御性に乏しいか、制御するには電力を必要とする製品だった。

 自家発電できる窓ガラス自体は新しいわけではないが、合理的コストで必要エネルギーを生成するというピアー・プラス製品の利点は特徴的だ。

 エレクトロクロミック・ガラスは、省エネ型の窓として有望視されながらも、コストの高さや設置の複雑さが弊害となって、いまのところ広範の普及にはいたっていない。ピアー・プラスの製品は、その課題を解消する可能性がある。

 ピアー・プラスは現在、オランダで複数の提携先と協力して試験運用プロジェクトを進めている。

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