ソニー、復活を目指し研究開発予算を増額 〜 投資回収率を疑問視する声も

 ここ7年間で6回目の年間赤字計上が確実視されるソニーだが、次なるヒット商品の開発によって復活を狙うために、2014年の研究開発費は前年比4%増の4850億円に達する見通しだ。

 なかでもソニー幹部が注目するのが、ソニー・コンピュータ・サイエンス研究所(ソニーCSL)が手掛ける研究開発活動だ。

 ビジネスウィーク誌によると、ソニーCSLは最近、ゴムのように曲がる携帯型コンピュータや、顔認識機能付き冷蔵庫、マッチ箱大の充電池で動く義足の試作品を開発した。

 ソニーは3月、タッチスクリーンに代わる「スマートスキン(SmartSkin)」という食卓のような機器を実演している。スマートスキンは天板がスクリーンになっており、そこに家族写真を表示したり、調理法を書き留めたりといったことが可能だ。スマートスキンは、2001年にソニーCSLで発案された。

 充電池式の義足を研究する遠藤謙氏は、自分が開発した技術の特許を保有できずソニーに持たれているが、開発技術を試用する目的でサイボーグ(Xiborg)という会社を設立し、自分が開発した技術の応用を試験している。

 ソニーCSLの研究開発の成果は、試作品開発から製品化まで、さらに10年以上を要することが多い。しかし、同研究所がこれまで世に送り出してきた製品や技術は、行動認識検知器や近距離通信など、重要な製品や技術も少なくない。

 ソニーが現在期待するのは、3月に発売した腕輪型身体装着装置の「スマートバンド」だ。

 フィットビット(Fitbit)やナイキ(Nike)のフューエルバンド(FuelBand)と同様に、スマートバンドも装着者の身体活動を監視する。スマートフォンと連携させ、装着者のゲームやウェブ閲覧時間を測定するといったことも可能だ。

 市場調査会社カナリス(Canalys)によると、2014年第1四半期に世界で270万個のデジタル腕輪が出荷され、そのうち約半数がフィットビットだった。ソニーはスマートバンドの売上高を公表していない。

 金融専門家のなかには、実用化からほど遠い技術の例を挙げ、ソニー研究開発の投資利益率を疑問視する意見もある。

 それに対しソニーの広報担当者は、「研究開発活動の成果は簡単に評価できない」「一つの技術が多くの製品に応用される場合に多い」と反論している。

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