米小売業界、チップ内蔵カード対応に注力 〜 大手のハッキング被害続出で

 ホーム・ディーポ(Home Depot)のセキュリティー・システムが侵入されたことを受けて、米小売業界ではセキュリティーを強化したチップ組み込み型カード(チップ対応カード)への移行が加速化しつつある。

 ウォール・ストリート・ジャーナル氏によると、ホーム・ディーポに加えて、小売チェーン大手のターゲット、そしてクレジット・カード会社大手らが、電子決済セキュリティーを強化していく方針をすでに打ち出している。

 ホーム・ディーポのフランク・ブレイク最高経営責任者(CEO)によると、同社はクレジット・カード読み取り端末すべてを2014年末までに電子チップに対応させる計画だ。

 また、サイバー攻撃を最近受けたターゲット(Target)も、自社の会員カード「レッドカーヅ」でのスマート・カード技術導入を加速化させている。同社は、2015年第1四半期までにすべてのカード読み取り機をチップに対応させる計画。

 また、ビザやマスターカードは、「トークナイゼーション(Tokenization)」と呼ばれる新技術を導入する。同技術は、特別の番号配列によって顧客の個人情報を認識することによって、ハッカーによる情報盗難の危険性を大幅に軽減する。

 クレジット・カード会社大手はさらに、小売業者に対して新たなセキュリティー規格「EMV(Europay, MasterCard, and Visa)」の導入期限を2015年10月までに設定。それ以後は、何らかの情報漏洩が起きた場合に、セキュリティー・チップに対応していない小売企業が責任を負うことになる。

 ただ、一部の小売業者は、新技術の導入コストをセキュリティー強化による被害回避によって相殺できるのかどうか疑問を持っている。

 また、セキュリティー・チップ対応カードの普及速度が遅い点も課題となっている。現在、セキュリティー・チップ対応カードの米国内発行数は5000万枚以下だ。実際、米国におけるEMV技術の導入速度は他国に比べて遅い。

 現段階でセキュリティー・チップ対応カードに移行していない小売業者は、顧客情報漏洩対応で大きく出遅れることが指摘される。システム更新のほか、認証機能の追加や顧客への新しいカード発行に1年以上かかるためだ。

 一部の専門家は、EMV技術がすべてのセキュリティー問題を解決するわけではない、と警告する。たとえば、以前から販売時点情報管理(POS)もハッカーの攻撃対象として指摘されている。

 それでも、最新のセキュリティー技術を導入することによって、小売大手はブランド力を回復でき、消費者から安心感を勝ち取り、業績の回復と安定化を実現できるという見方は強い。

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