クラウド事業失敗で正念場のHP 〜 中小の特定顧客向けサービスに軌道修正

 ヒューレット・パッカード(HP)は1年前に、クラウド電算の世界を同社の技術によって変えると考えていたが、実際には、クラウド電算の方がHPの将来を揺るがそうとしている。

 ニューヨーク・タイムズによると、HPはパブリック・クラウド電算サービス市場において、大手のアマゾンやグーグル、マイクロソフトに対抗する姿勢だったが、それらの3大パブリック・クラウド・サービスの勢力は強まるばかりで、HPでは、同事業からの撤退検討を余儀なくされている。

 HPは依然として、世界中の企業やデータ・センターにサーバーを提供する大手だが、クラウド・サービスでは苦戦を強いられ、HPの顧客たちがクラウド・サービスを提供するようになりつつある。

 そうしたなか、同社のメグ・ホイットマン最高経営責任者(CEO)は、中小規模のクラウド電算システムの構築および提供に焦点を合わせようと考えている。

 たとえば、HPの顧客であるフォックス・エンタテインメントは、HPのサーバーを使う一方で、電子メールやデータ処理にはマイクロソフトの製品、顧客関係管理にはセールスフォース(Salesfoce.com)のクラウド製品を使っている。HPではそういった企業に対し、一元管理できるクラウド・サービスを提供しようと考えている。

 HPはこれまで、企業向けサーバー市場を掌握し、それにともなう管理やセキュリティーといった派生サービス事業も順調に伸ばしてきた。そのため、パブリック・クラウド・サービス事業で市場を獲得できる、とHPは考えたが、それが誤算となった。

 HPは2015年10月に分社化される。一つはクラウド電算技術を含む法人向けITサービスの会社となり、もう一つはパソコンやプリンターを中心とする消費者製品を製造販売する。

 HPの従業員がその大転換をどこまで理解してどのように対応していくのかを同社経営陣がどこまで把握しているのかについて疑問も指摘され、HPの将来には不透明要因が増えている。

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

最近のニュース速報

アメリカの移民法・ビザ
アメリカから日本への帰国
アメリカのビジネス
アメリカの人材採用

注目の記事

  1. 今年、UCを卒業するニナは大学で上級の日本語クラスを取っていた。どんな授業内容か、課題には...
  2. ニューヨーク風景 アメリカにある程度、あるいは長年住んでいる人なら分かると思うが、外国である...
  3. 広大な「バッファロー狩りの断崖」。かつて壮絶な狩猟が行われていたことが想像できないほど、 現在は穏...
  4. ©Kevin Baird/Flickr LOHASの聖地 Boulder, Colorad...
  5. アメリカ在住者で子どもがいる方なら「イマージョンプログラム」という言葉を聞いたことがあるか...
  6. 2024年2月9日

    劣化する命、育つ命
    フローレンス 誰もが年を取る。アンチエイジングに積極的に取り組まれている方はそれなりの成果が...
  7. 長さ8キロ、幅1キロの面積を持つミグアシャ国立公園は、脊椎動物の化石が埋まった岩層を保護するために...
  8. 本稿は、特に日系企業で1年を通して米国に滞在する駐在員が連邦税務申告書「Form 1040...
ページ上部へ戻る