ウールに代わる新繊維〜原料は食肉処理場の廃棄物

 食肉工場の廃棄物から柔らかい高級ウールのような質感を持つ新種の繊維を作る方法が開発された。

 クリスチャン・サイエンス・モニターによると、開発したのはチューリッヒ工科大学機能材料研究所(FML)の研究生フィリップ・シュトーセル氏(28)を中心とするチーム。原料のゼラチンを糸状にして紡ぎ、ニットとしても織物としても使えるという。

 ゼラチンの主成分は、動物の皮、骨、けんなどから抽出したコラーゲン。食肉処理場の廃棄物に大量に含まれており、簡単にゼラチンにできるという。この繊維を使って編んだ手袋は、ウールで編んだ物より絹のような光沢がある。ただし濡れると弱くなるため、チームは現在この点の改良に取り組んでいる。

 ウールは世界的に大きなビジネスで、より柔らかく良質で低価格の製品を開発することは科学者の大きな目標となっているため、新繊維は、繊維産業やカシミアのような高級毛織物を好むが高価すぎて手が出ないという人に朗報と考えられる。

 しかし、動物愛護団体PETAのイングリッド・ニューカーク代表は「動物の骨からしみ出たゼラチンを身にまとうなんてぞっとする。そういう心理面よりさらにひどいのは、この繊維でできた服を購入することによって、人間と同じように感覚を持った動物に恐怖や痛みを与えている陰惨な業界を支えることになる」と批判している。

 繊維専門家のデボラ・ヤング氏によると、ウールは動物の毛を指すため、この繊維を新しいウールと呼ぶのは正確ではなく、強いて言えば「新しいアズロン(Azlon)」だという。アズロンは第二次大戦中に開発されたスキムミルク・タンパク質(カゼイン)を原料とする繊維だが、「スキムミルクは着たくない」という人が多かったため普及しなかった。

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