温暖化知りつつ懐疑論後押し〜エクソン、研究班が70年代に報告

 米石油最大手エクソンは、地球温暖化問題がまだ広く知られていなかった約40年前から化石燃料が温暖化に与える影響を認識していたものの、ビジネスを優先して「温暖化懐疑論」の支援にこれまで3000万ドルを投じていたことが、非営利の報道機関インサイド・クライメート・ニュース(ICN)の調査で分かった。

 クリスチャン・サイエンス・モニターによると、ICNが8カ月にわたって調査した結果、エクソンの研究員だったジェイムズ・ブラック氏が1977年、同社幹部に「化石燃料の燃焼による二酸化炭素(CO2)の排出という形で人間が地球の気候に影響を与えている可能性が高いことは、研究者の間で共通認識になっている」と報告したことが分かった。翌年には「今後5〜10年間で人類はエネルギー戦略の変更に関する厳しい決定を下す必要が出てくる」と予想していた。

 当時のエクソンは気候研究の最前線に立ち、研究・工学部門には大学やエネルギー省と協力して高度な天候モデルを開発していた実績のある科学者や数学者のチームがいた。彼らは、100万ドル以上を投じて3年間にわたり大気や海のCO2濃度を測定し、研究結果を科学誌にも発表していた。

 エクソンの科学者チームは82年、「もっと研究が必要だが、地球温暖化の抑制には化石燃料の燃焼を大幅に減らす必要がある。そうしないと壊滅的な事態が起きる可能性がある」と警告している。一方、第2次石油危機による景気後退(リセッション)を経て米国では80年代半ばまでに温暖化が話題になり始めた。しかし、原油だぶつきによる価格低下で業績が低迷していたエクソンは、80年代末にCO2に関する研究費を削減した。

 その後は温暖化懐疑論を広め、GHG排出を制限する国際的な動きを押しとどめるロビー活動に力を入れるようになった。環境保護団体グリーンピースによると、同社は14年だけで気候変動を否定するグループに100万ドルを投じている。

 現在のエクソンは、気候変動を「リスク」と認識してはいるが、化石燃料の使用削減が正しい対策とは考えておらず、14年には「将来の世界的なエネルギー需要を満たすには、炭素燃料を含めたすべてのエネルギー源が必要」と表明している。

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