IoT普及で無線通信網の刷新が必須 〜 アルカテル・ルーセントのCTOが指摘

 ベル研究所(Bell Labs)のマーカス・ウェルドン社長は先日、モノのインターネット(IoT=Internet of Things)の普及を背景に、通信需要の拡大に対応するためには、モバイル通信網を今後数年間で抜本的に再設計する必要がある、という見方を示した。

 ベル研究所は、通信機器大手アルカテル・ルーセント(Alcatel-Lucent)の研究部門。

 コンピュータワールドによると、アルカテルの最高技術責任者(CTO)でもあるウェルドン氏は、モバイル分野の現状を、産業革命やインターネット登場に並ぶ重大な産業革新動向の始まりととらえている。

 同氏は、世界で起きているすべてのことを測定し、ほとんどの機械を遠隔制御できるようになるプラットフォームが2025年までに整備される方向に向かっていると予測した。

 同氏はまた、こんにちの無線通信網の通信帯域の限界に言及し、通信網と端末間でやり取りされる信号向けシステム、つまりシグナリング用システムを通信サービス会社(キャリヤー)が再構築しなければ需要に対応できなくなる、と指摘している。

 たとえば、既存の典型的な携帯電話用基地局は端末約1200台の無線信号処理に対応しているが、今後10年間にIoT用途向け検知器や通信網接続機械の導入が進むと、その数は30万台に増える可能性がある、と同氏は予想する。

 シグナリングはクラウドへの移行も進んでいるが、基地局と無線機とのリアルタイム通信が必要なため、グーグル(Google)やアマゾン(Amazon)が運用するような大型の地方データ・センターでは処理が難しい。仮に、大陸の端からほぼ中央まで信号を届ける必要がある場合、基地局と端末間の通信はタイムアウトになり最初からやり直す必要が生じる。

 ウェルドン氏は、その代わりに電算ニーズを仮想化し、基地局に近い施設間で分散する必要があると話す。5G通信網では、待ち時間を1ミリ秒に抑えるのが業界の共通認識であり、電算ニーズの分散処理がますます重要になる。

 そのため、信号と信号トラフィックは、基地局から約10キロメートルと100キロメートル離れた場所にある複数のデータ・センターで処理される必要がある、と同氏は指摘する。

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