第21回 「オトナの遊び心」

文&写真/小野アムスデン道子(Text and photos by Michiko Ono Amsden)

入り口に並ぶのは全員オトナ!Photo © Michiko Ono Amsden

入り口に並ぶのは全員オトナ!
Photo © Michiko Ono Amsden

昼は子供中心の場所で
夜はオトナが科学する

 OMSI(オレゴン科学産業館)には、科学をいろいろと楽しめるユニークな展示や実験がいっぱい。風力や科学反応の実験を試したり、人体の不思議や宇宙の誕生を知ったりと大はしゃぎする子供に混じって、大人も興味深い時間が過ごせるポートランドでおすすめの施設だ。すぐそばのウィラメット川の岸には、海軍で使われていた潜水艦であるUSSブルーバック号が留められていて、中に入ることができる。4Kプロジェクターにドルビーシステムのある巨大スクリーン・シアターやプラネタリウムもある。

 その歴史は、遡れば1944年に歴史、科学、産業博物館の設置を目的に財団が作られ、1949年にワシントンパーク近くに展示のための建物が寄付されたところから始まる。その後にプラネタリウムが設置され、年間に60万人という来場者を集めるに至って、収容がしきれず1992年に移動。現在の建物も地元の電力会社であるPortland General Electricから寄付された発電所を改築したもので、市民が文化を支えるポートランドらしい施設なのだ。

 さて、年齢を問わず楽しめる場所ではあるが、昼間はやはり子供が走り回り、大人は付き添って「確かに昔こんな実験、学校でやったなあ」と懐かしく思い出すという感じ。そんなOMSIで、夜におつまみとお酒を片手に科学を楽しめるという21歳以上限定のイベントが「OMSI アフター・ダークOMSI After Dark」だ。年に何回かアート&デザインなどテーマを設けて開催されているが、やはりそこはポートランド。ビールがテーマの「ブリューフェストBrewfest」はじめ、ローカルのサイダーやスピリッツと共に科学を楽しもうじゃないかというものも。そんな愉快なイベントの一つ「コルクランディアCorklandia」というワインを楽しむアフター・ダークに参加した。

エクアドルのチョコレート農家の出会いから、家族経営のチョコレートメーカーになった「クレオCREO」は2014年創業。Photo © Michiko Ono Amsden

エクアドルのチョコレート農家の出会いから、
家族経営のチョコレートメーカーになった「クレオCREO」は2014年創業。
Photo © Michiko Ono Amsden

ローカルベンダーの
プロモーションの場

 入場には年齢確認のIDが必要。45ドル(OMSIメンバー等は35ドル)でワインとおつまみが自由に選べる10枚のトークンをもらう。ちゃんとドライバー用に飲めないけれど入場はできるというチケットも15ドル(OMSIメンバー等は7.5ドル)で用意されている。水ロケットを飛ばすといった童心に帰れるような実験はじめ、ココナツウォーターを使った化学実験など特別展示も。そして、ポートランドのローカルやオレゴンのワイナリーから11のベンダーがワインを、レストラン、バー、カフェやフードサプライヤーなど14のベンダーがおつまみや試食品を提供していた。ポートランドでは、街中でもワインを造ったり、テイスティングルームを設けたりというアーバンワイナリーも流行っていて、「PDXアーバンワイナリーズ」という団体も作っているほどなのだ。その他にもチョコレートやハチミツ、ディップやドレッシングなどまだ起業して間もないローカルベンダー達にとっても自分達の味を知ってもらうプロモーションのいい機会にもなっている。

 科学とお酒、そしてローカル感あふれるポートランドらしいイベントは大人気だった。

■OMSI
http://www.omsi.edu
住所:1945 SE Water Ave, Portland, OR 97214
電話:503-797-4000

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小野アムスデン道子 (Michiko Ono Amsden)

小野アムスデン道子 (Michiko Ono Amsden)

ライタープロフィール

世界有数のトラベルガイドブック「ロンリープラネット日本語版」の編集を経て、フリーランスへ。東京とポートランドを行き来しつつ、世界あちこちにも飛ぶ。旅の楽しみ方を中心に食・文化・アートなどについて執筆、編集、翻訳多数。日本旅行作家協会会員。

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