ダイバーシティ:初めの一歩

近年よく聞く「ダイバーシティ」という言葉。皆様が勤務されている会社でも、一度は耳にしたことがあるのではないでしょうか。

ダイバーシティとは、直訳すると「多様性」という意味です。ビジネスシーンにおいては、主に「人種や国籍、性別などの違いにとらわれず、多様な人材を生かしていこう」といった趣旨で使われることが多いかと思います。

アメリカでは以前からこのダイバーシティの概念を尊重する風潮があったのですが、最近では日本でも率先的に企業の理念・方針に取り入れていこうとする会社が増えてきているようです。「多様な人材を確保することで、今までにない創造性・革新性に富んだアイデアを取り込み、市場での競争力を強化したい」といった期待があるようですね。

さて、「今後はダイバーシティを推奨し、積極的に会社の方針に取り入れよう」と言うのは簡単ですが、実際すぐに社員の心が切り替わるわけではありません。

人間誰しも、自分と同じもしくは似たような境遇の人に対しては親近感を覚えるものですが、今まで自分が関わったことのない分野の人とも同様に接していくのは、少々ハードルが高いものです。また、人は無意識的に「こんな背景を持った人は、こんな特質を持っているに違いない」という、ある種のステレオタイプ的な考え方をするといわれています。これは別名「Unconscious Bias(=無意識バイアス)」と言われています。

今後、真にダイバーシティを取り入れていこうとするのであれば、私たちは各々で自分の心理・思考を理解しながら進めていく必要があります。

「いや、自分は問題なくダイバーシティを率先して歓迎できる」という方もいらっしゃるかもしれません。事実、私も自分自身でそう思っていました。しかし先日私は、自分のこの奢った考え方が覆されるような体験をしたのです。

ある社外研修に参加した時のことです。その時のセミナー講師の外見や話し方が、私の苦手なAさんとそっくりだったのです。この共通性に気づいた瞬間、私の頭の中では「Aさんと同じく、この講師も私の苦手な性格に違いない」という判断を自動的・無意識的にしていました。残りのセミナー時間はその考えに捕らわれてしまい、好感が持てる授業とは言えませんでした。

セミナー終了後、その講師と個別に話をする機会がありました。正直、その人と会話したいという思いはまったくなかったのですが、いざ話をしてみると、だんだん私の第一印象から想像していたものとはまったく違う姿が見えてきたのです。実際その人はAさんとは違うタイプの方でした。

ではなぜ私は、この人は苦手だと決めつけてしまったのでしょうか?

おそらくそれは、最初に私が入手した情報でこの講師とAさんとの共通点を見出し、結論づけてしまったからでしょう。もしセミナー終了後の会話がなければ、私はこの講師の真の姿を理解せず、自己の偏った判断で決めつけてしまっていたかと思います。これは極めて残念なことです。

もう一つ、この無意識バイアスの恐ろしい点は、「自分の初見判断は正しいのだ」と思いたいがあまり、無意識的にこの講師に関する情報をフィルターにかけ、私の判断にとって都合のよい情報(=Aさんとの共通項)のみを選り好みして自分にインプットする傾向があるということです。こう物事を判断してしまうと、本当に理解すべき全体像を見失ってしまいかねません。

真のダイバーシティを進めていくためには「多様な人材を雇って、はい終わり」ではなく、私たちそれぞれが意識的に自分とは異質の人材を理解し、受け入れていこうとする必要があります。

「自分はオープンマインドであり、先入観にとらわれない人間だ」と思われている方々も、今一度振り返ってみるのもいいかもしれません。まずは自分の思考パターンに気づき、そしてそれを意識しながら日々の姿勢に反映させていくことで、ダイバーシティへの初めの一歩が踏み出せるのではないでしょうか。

参考資料:
https://www.kaonavi.jp/dictionary/inclusion/
https://www.conexio.co.jp/biz/blog/workstyle/changeworkstyle-diversity/index.html

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

北村祐子 (Yuko Kitamura)

北村祐子 (Yuko Kitamura)

ライタープロフィール

在米20年。津田塾大学を卒業後に渡米し、ルイジアナ大学でMBAを取得後、テキサス州ダラスにある現在の会社で勤務すること17年目。ディレクターとして半導体関係の部品サプライチェーン業務に関わるかたわら、アメリカで働く日本人女性を応援しようと日々模索中。モットーは、「鳴かぬなら 鳴かせてみせよう ホトトギス」。

この著者の最新の記事

関連記事

デジタル版を読む

フロントライン最新号
ページ上部へ戻る