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たばこのみ申す間敷候(たばこのみもうすまじきそうろう) -(後編)
文/在米日本人フォーラム(Text by Japanese Forum USA)
- 2018年3月30日
日本は昔から資源が乏しい国と言われてきている。しかし、ここで実は資源はいくらでもある、と言ったら誰もが怪訝な顔をするに違いない。これは事実である。ここで言う資源とは「無駄」である。つまりこの無駄をなくすことにより時間と金を創生することができる。こう言われると反論する人は少ないだろう。
3.SMOKING BANS – 喫煙禁止法
喫煙に関して日本は世界の中で絶対的後進国と言われています。日本もようやく昨年の国会で「受動喫煙禁止法案」が審議されました。しかし、諸外国のSMOKING BANS (喫煙禁止法)とは違い、受動喫煙禁止法と何とも中途半端な名前の法案です。要するに受動喫煙がなければ喫煙OKとも取れる法案名です。さらに昨年の国会では、さんざん重箱の隅をつつくような審議が重ねられたあげく、結局成立に至りませんでした。
国民の範たる国会議員の中にまだ喫煙者が多くいるのですから、法案がまとまるはずがありません。この辺が喫煙において日本が後進国と言われる所以です。海外に在住している私たちは、喫煙に関してだけは母国を恥ずかしく思わねばならないのが残念です。
アメリカにおける酒やたばこなどの法律は、州ごとに制定されています。SMOKING BANSの法を調べてみると、完全禁止が28州、条件付禁止が9州、禁止法が無いのが13州となっています。
完全禁止及び条件付禁止の州(50州中37州)で言えることは、とにかくENCLOSED AREA(周囲が囲まれた場所)は喫煙禁止となっています。どれだけ広くてもまず屋根があれば禁煙、さらに塀や壁に囲まれた建物で、たとえ屋根が無くても野球場、サッカー場、フットボール場なども喫煙禁止です。禁止法が無い州でも、個別に禁止している所が多くあります。例えばテネシー州は禁止法のない9州の中の一つですが、メンフィス空港は内も外も空港全体が禁煙です。そして、レンタカーも喫煙が許される車は殆どありません。
日本は、アメリカや諸外国の厳しい喫煙禁止に比べて、法案名に喫煙禁止法ではなく「受動」という枕詞がついていることや、さらに国会において「分煙」といったことが討議されること自体が既に後進国そのものと言えるでしょう。
日本の喫煙率は年々減少しています。2015年の統計では、成人男性30.1%(1996年83.7%、この数字には驚き)、女性7.9%、平均18.2%となっています(参考:アメリカ、男性12.2%、女性10.7%、平均11.4%)。飲食店を禁煙にすると、集客が減ると主張されていますが、世界の禁煙の結果をみるとそうでもなさそうです。禁煙にすることで今まで敬遠していた禁煙者の来客が増えて、結果的に集客数が増えたという例が多く報告されています。喫煙は周囲に有害ですから、狭い日本で分煙などという姑息な法案が許されてはなりません。喫煙禁止に関して、日本が一日も早く先進国の仲間入りをして欲しいものです。
4.アメリカで喫煙者はトップになれない
私の禁煙は、冒頭に書いたとおり1992年に始まりました。その二年後に会社の清算が終わり、さらにその後アメリカのアーカンソー州に赴任することになりました。アメリカの地図上で喫煙率を俯瞰してみると、南部は北部に比して圧倒的に高率です。
私が赴任した地域の喫煙率は多分日本の成人男子と同じくらいだったと思います。私が社長として着任した会社の人たちは異口同音に、たばこを吸わない日本人を初めて見たと言ったのです。日本人としてちょっと恥ずかしかったです。一方で喫煙しない私を見る周囲の目が好意的だったのも事実です。そして、赴任して間もなくアーカンソー州も喫煙禁止法を制定し、あらゆるENCLOSED AREAでの喫煙が禁止されました。最初に会社のみんなの喫煙に対する反応を見て、私は禁煙していて良かったと思うとともに、州の法令が私の禁煙を後押しをしてくれたのはありがたかったです。
最近の記事「アメリカで進むたばこ規制!喫煙者に厳しいアメリカ社会の現状」の一部を紹介します。
(1) 喫煙率は、大卒以上で7.9%、大学入学で19.7%、高卒で26.4%、高卒未満で26.5%と、学歴が低くなるほど増えている。(注:大学入学というのは、大学に入学したが卒業できなかった人たちです。アメリカでは大学の卒業がいかに難しく中退する人が多いかが、こんな単語がわざわざあることで分かります。)(参考:習慣性飲酒は、高卒未満で35.3%に対し、高卒で47.3%、大学入学で52.3%と学歴が高くなるほど割合が増え、大卒以上では64.2%で、たばこと完全に率が逆行しています。)
(2)アメリカでは、低所得の人たち、ゲイやレズビアン、両性愛者、性転換者の喫煙率が高く、たばこ業界はそうした人々をターゲットにしているという。(GLBTの差別視ではありません、あくまで統計数字です)
(3)最近は、嫌煙傾向がさらに強まり、喫煙者は就職できない、あるいはタバコを吸うと解雇されるといった事例も出てきている。
上記した記事が示すように、アメリカでは喫煙者への風当たりがますます強くなっています。アメリカ企業のTOP EXECUTIVESになるうえでタブーとされるのは、「喫煙」と「肥満」です。映画ゴッドファーザーの背景になっている時代、また名優ハンフリーボガード(多分若い方々は知らないでしょう)が活躍した時代は、たばこをくゆらせながら斜(はす)に構えて殺し文句を一言、というのが男のロマンでした。しかし、今のアメリカでは「喫煙」と「肥満」は、自己管理ができない人間と評価され、周囲の人からの尊敬も半減してしまいます。そして、自己管理もできない人間に企業経営を託せないというのが一般的見方なのです。ということで、喫煙者はアメリカの企業(特にトップ企業)のエグゼクティブにはなれないのです。
最後に
日本では地位の高い人たちでもまだまだ喫煙者が多いのですが、そういう人たちこそ喫煙は品格・品性を貶めるものという自覚と認識を持って、上に立つ者こそ範たるべしと禁煙に踏み切って欲しいものです。そして、日本国の法律として、改めて370年前の「たばこのみ申すまじきそうろう。百害あって一利なし。」の慶安御触書を一日も早く立法化すべきです。
私自身、喫煙者の裏切り者としては、煙草は「煙と消えてしまう無駄」、「時間と金の損」、そして「自他ともに有害」という強い意識が日本の社会全体に徹底されることを願ってやみません。
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