ルート61 音楽街道の旅

文/細田雅大(Text by Masahiro Hosoda)
写真/川畑嘉文(Photos by Yoshifumi Kawabata)

アイオワ州ダヴェンポートを出ると、綿花畑が復活。と思ったら積雪だった。そのうち吹雪にPhoto © Yoshifumi Kawabata

アイオワ州ダヴェンポートを出ると、綿花畑が復活。と思ったら積雪だった。そのうち吹雪に
Photo © Yoshifumi Kawabata

5日目 11月6日
恐れていた降雪の中ラクロスへ

 朝から雨。モーテルの受付には投票を促すオバマ陣営のパンフレットが置かれている。モーテルを出て走り出すと「Get Hope Fire Obama」(希望を持ちオバマをクビに)という看板があり、選挙戦の激しさがうかがえる。車内のBGMは王様と神様。神様の「Rock and Roll Music」「Roll Over Beethoven」が流れると川畑氏が「ビートルズの曲だ」と言う。正しくは神様の曲をビートルズがカバーしているのだ。
 ダヴェンポートのミシシッピ河のほとりには、またもやカジノ。その横の公園が、ウディ・アレンの映画「マンハッタン」のポスターにあるプロムナードに似ている。橋がいくつかあり、対岸も近く、都市を流れるミシシッピ河を見るにはもってこいの場所。

 9時45分にダヴェンポートを出発。デウィットという町を過ぎたところで、小さな白い物体が路傍に点々と見え始める。こんな北にまで綿花畑があるのかと不審に思い下車してみると、綿花屑ではなく積雪。じきに雪が降り始め、吹雪となる。恐れていた事態の到来だ。車を借りたのは暖かいニューオーリンズ。しかし北部では雪が降り、路面が凍結するかもしれない。南国の車は果たして北国での運転に耐えられるのか。アラモの受付で尋ねてはいたが、明確な回答はなく、一笑に付されてしまっていた。
 視界不良の中、速度を落とし運転する。ボスコベルという小さな町のA&Wで昼食。ルートビアーのブランドとしてのみ知っていたA&Wだが、ファストフード店でもあったのだ。テーブル備え付けの電話機から厨房に電話して注文する仕組み。フィッシュサンドイッチにオリジナルのルートビアーをいただいて出発。

 この辺りから私に「急性左右取り違え症」とでも言うべき症状が現れる。助手席でナビをする川畑氏が「次の交差点を右に」と指示する。「分かった右だね」と私は答えるが、方向指示を左に出してしまい、二人とも激しく慌てるという大変危険な症状だ。「アメリカの大地の魔力のせいだ」などと語り合う。風景がほとんど変わらない中、長時間の運転を続けることから生じる神経衰弱のようなものではないかと思う。

ウィスコンシン州ラクロスを出てしばらくは、すぐ右にミシシッピ河が見えるPhoto © Yoshifumi Kawabata

ウィスコンシン州ラクロスを出てしばらくは、すぐ右にミシシッピ河が見える
Photo © Yoshifumi Kawabata

 3時にウィスコンシン州ラクロスに到着。ミシシッピの河幅がなぜか急に縮んでいる。この辺りに多い中州を対岸と勘違いし、狭く見えただけだと判明。EconoLodgeに53ドルで宿泊。この町の名物料理は何かと受付のお姉さんに聞くが、そんなものは特になさそう。しかし親切な彼女は地図まで印刷して、お気に入りのレストランを教えてくれる。「数週間前は紅葉がとても美しかったのよ」とのこと。「我々は時期を逸しちゃったんだな」と私が嘆くと「今でも十分に素敵な町よ」と言って慰めてくれる。「今日は選挙の日ですね」と言うと「I voted today」という胸のワッペンを誇らしげに示す。「ウィスコンシン州はオバマかロムニーかどっちに転ぶか分からないそうですね」「ほんと、ナーバスになっちゃうわ」
 夜、印刷してもらった地図を見ながらレストランに向かうが、いくら探してもその場所にレストランなど存在しない。ミステリーシャワーに続く第二のミステリー。他に選択肢がなく、中華のテイクアウトを食べながらオバマ再選の夜を過ごす。

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