ルート61 音楽街道の旅

文/細田雅大(Text by Masahiro Hosoda)
写真/川畑嘉文(Photos by Yoshifumi Kawabata)

Photo © Yoshifumi Kawabata

Photo © Yoshifumi Kawabata

3日目 11月4日
王様の豪邸を経てセントルイスへ

 今日はミズーリ州のセントルイスまで進む予定。今回の旅で最長となる7時間のロングドライブだ。シャワーを浴びてさっぱりしようとするものの、シャワーからお湯を出す方法がどうしても分からない。川畑氏とともに徹底的にバスルームを調べるが、下の蛇口から出るお湯を上のシャワーから出すためのレバーやハンドルが一切見当たらない。ミステリーシャワーと命名する。

 メンフィスの朝の気温は摂氏7度。ニューオーリンズは夏だったが、突然冬になった。エルヴィス・プレスリーやロイ・オービソンなど初期ロックンローラーが録音したサン・スタジオへ行く。イギリスから来たという老夫婦が開館を待っている。「エルヴィスがお好きなのですか?」と聞くと「どちらかと言えばスタックスの方が好き」とのこと。オーティス・レディングは偉大なり。伝説のクロスロードにも行くそうなので、記念碑を探して時間を浪費しないよう伝える。

エルヴィス・プレスリーらが録音したメンフィスのサン・スタジオPhoto © Yoshifumi Kawabata

エルヴィス・プレスリーらが録音したメンフィスのサン・スタジオ
Photo © Yoshifumi Kawabata

Photo © Yoshifumi Kawabata

Photo © Yoshifumi Kawabata

エルヴィス・プレスリーの豪邸、グレースランドには、たくさんの観光客の姿があった。巨大な似顔絵や自家用飛行機も Photo © Yoshifumi Kawabata

エルヴィス・プレスリーの豪邸、グレースランドには、たくさんの観光客の姿があった。巨大な似顔絵や自家用飛行機も
Photo © Yoshifumi Kawabata

  “キング・オブ・ロック “エルヴィス・プレスリーの豪邸、グレースランドへ向かう。 “キング・オブ・ポップ “マイケル・ジャクソンが自らの豪邸をネバーランドと呼んだのはエルヴィスの影響だろう。マイケルは一時、エルヴィスの娘とも結婚しているのだ。観光客が続々とやって来る。近くにあるホテルDays Innには「Before Elvis There Was Nothing — John Lennon」という看板。プレスリーはビートルズをも夢中にさせたのだ。豪邸を囲む壁はファンが残した寄せ書きで一杯だ。足下のおぼつかない老婆三人が「Elvis is not King but Jesusって書かれてるわよ」と語り、興奮気味だ。

 メンフィスを11時に出発。ミシシッピ河を横断する途中でアーカンソー州に入り、61号線は州間幹線道路(インターステート)と合流する。巨大なトラックに前後左右を囲まれ、ちょっと怖い。しかし、じきに61号線は分離。綿花畑が続く。どうしても食事がファストフードに偏り野菜不足となるので、ピザハットでランチビュッフェ。とにかくサラダを食べる。
 ニューオーリンズ出発時から「Dollar General」という看板をよく見かける。プリペイド携帯などを格安で売っているディスカウント店だ。飲み物や簡単な食品も手に入るので重宝。4時前に2回目の給油。39ドルで満杯に。

 ミズーリ州に入り、スコットシティという町を越えた辺りで綿花畑が消える。セントルイスまでもう少しという場所で路傍に子鹿を発見。道路の中央でなくて良かった。夜でなくて良かった。車のライトに突然照らされると、鹿は固まって微動だにせず、そのため衝突事故が起きると聞く。鹿は死に、車も壊れる。あわててよければ大事故につながる。
 7時30分にセントルイスの郊外に到着。EconoLodgeに70ドルで宿泊。7時間以上の運転だった。セントルイス名物のラビオリを食べにモーテル前のレストランに行くも既に閉店。世界各地の難民や被災者を撮るのが仕事で、過酷な取材には慣れているはずの川畑氏が「アメリカ、デカすぎる。移動がいちばん疲れる。この大陸、デカすぎる」とつぶやいた。

1 2 3

4

5 6 7 8

この記事が気に入りましたか?

US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします

関連記事

Universal Mobile
アメリカの移民法・ビザ
アメリカから日本への帰国
アメリカのビジネス
アメリカの人材採用

注目の記事

  1. キッコーマン うちのごはん 忙しくて食事の準備に時間はかけられないけれど、家族やお子...
  2. ニューヨークの古い教会 根を詰めて仕事をし、極度に集中した緊張の日々が続くと、息が詰まって爆...
  3. ダイナミックに流れ落ちるヴァージニア滝の落差は、ナイアガラの滝の2倍 カナダの北西部、ノース...
  4. アメリカでは事故に遭い怪我をした場合、弁護士に依頼することが一般的です。しかし日本にはそう...
  5. グッゲンハイム美術館 Solomon R. Guggenheim MuseumNew York ...
  6. 2023年2月14日

    愛するアメリカ
    サンフランシスコの町並み 一年中温暖なカリフォルニアだが、冬は雨が降る。以前は1年間でたった...
  7. キルトを縫い合わせたような美しい田園風景が広がるグラン・プレ カナダの東部ノヴァスコシア州に...
  8. 本稿は、特に日系企業で1年を通して米国に滞在する駐在員が連邦税務申告書「Form 1040...
ページ上部へ戻る