ルート61 音楽街道の旅

文/細田雅大(Text by Masahiro Hosoda)
写真/川畑嘉文(Photos by Yoshifumi Kawabata)

ボブ・ディランの故郷ダルースの町にあるBob Dylan WayPhoto © Yoshifumi Kawabata

ボブ・ディランの故郷ダルースの町にあるBob Dylan Way
Photo © Yoshifumi Kawabata

7日目 11月8日
さらに北ボブ・ディランの生誕地へ

 運動不足なので、モーテルの外に出て軽いランニング。ミネアポリスのさらに北なので耳がちぎれそうな寒さ。モーテルの駐車場で足を伸ばしていると犬の吠え声が聞こえる。くぐもった小さな音なのに、すぐ近くで吠えている。1台だけ離れて停められた車の中で、2匹の犬が牙をむき出し、凶暴に吠えている。この車は絶対に盗まれないだろうが、少し野蛮な気がしないでもない。
 モーテルのシャワーはまるで温泉のよう。硫黄の香りがわずかに漂い、ちょっとぬるぬるした水質でお肌に良さそう。コーエン兄弟の映画「ファーゴ」の撮影場所であったことも判明する。ウィリアム・H・メイシーが最後、逮捕されたシーンが撮影されたのではないかと思う。

 マクドナルドで朝食を取り、61号線の北端を越えてさらに北上。ボブ・ディランが生まれた街ダルースに向かう。1991年以前、61号線はワイオミングからダルースを通過し、カナダとの国境まで伸びていた。BGMはもちろん「Highway 61 Revisited」だ。
 1時30分に到着。スペリオル湖のほとりのレストランで久しぶりにファストフードではない食事。隣の土産物屋の女の子に「ボブ・ディランを記念した道はどこ?」と聞くが、そもそもディランとは誰かを知らないよう。二人目の女の子がやっとBob Dylan Wayへの行き方を教えてくれた。ギターを弾くディランの後ろ姿を描いた小さなプレートが、点々と取り付けられているだけの道。ディラン饅頭とかディラン煎餅といった便乗商品は見当たらない。当たり前か。
 20ドル分の給油をし、ミネアポリスへUターン。空港近くのMotel 6に57ドルで宿泊。深夜、川畑氏が飛び起きる。蚊の何倍も痒いナンキン虫(ベッドバグ)に噛まれている。今さらフロントに話して部屋を変えるのは面倒なので、川畑氏は寝袋にくるまり、床で寝た。

 こうして我々の旅は終わった。のんびりした気楽な旅になるだろうと考えていたが、とんだ見込み違いだった。 総走行距離は2000マイルを超え、朝から晩まで移動続きの毎日に、私も川畑氏も疲労困憊した。とはいえ、楽しくなかったわけでは決してない。
 道沿いの酒場で演奏しながら少しずつ北へ向かった古のミュージシャンたちの苦しみや喜びに思いは飛んだ。

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細田雅大 (Masahiro Hosoda)

細田雅大 (Masahiro Hosoda)

ライタープロフィール

1966年、島根県の松江市生まれ。地元の高校を卒業後、上京して大学生となり、読書の楽しさを知る。大学を卒業した1991年からは、看護関係の出版社に勤務し、古き良き活版印刷における編集の仕事に携わる。しかし99年、「ここで出来ることは全部やった」と思えたので、米国ニューオーリンズに語学留学(という名の気分転換)。海外生活が性に合ったか、2001年からはニューヨークに居を移し「U.S. FrontLine」誌で編集&ライターとして勤務。2010年、またもや「出来ることは全部やった」と感じ、フリーランスに転身。現在は帰国し、主に日本語から英語への翻訳を生業としながら、「いつかまた取材の旅に出たい」と思う日々。

川畑嘉文 (Yoshifumi Kawabata)

川畑嘉文 (Yoshifumi Kawabata)

ライタープロフィール

千葉県出身。ペンシルベニア州立大学政治学部国際政治学科卒業後、本誌フロントラインに勤務。2001年9月11日、ニューヨークを襲った中枢同時多発テロの現場グラウンド・ゼロに、おそらく日本人として最も早く侵入し、シャッターを押した。その後日本に帰国し、撮影事務所での修行をへて、2006 年、フリーのフォトジャーナリストに転身。貧困や難民問題、自然災害などをテーマに、アフリカ、アジア、南米などの途上国で取材を続けている。2014 年4月、シリア難民の子供たちを撮った写真が、日本写真家協会コンテストの金賞を受賞した。著書に「フォトジャーナリストが見た世界:地を這うのが仕事」。

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