シリーズ世界へ! YOLO⑰
自転車で回る台湾~前編

文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)

高雄 / カオシュン / Kaohsiung

高雄の観光名所「蓮池」。龍の口から塔に入って、虎の口から出ると、運気が上昇すると言われている Photo © Mirei Sato

高雄の観光名所「蓮池」。龍の口から塔に入って、虎の口から出ると、運気が上昇すると言われている
Photo © Mirei Sato

 台湾は国土の真ん中、南北に山がそびえていて、東西をダイレクトに結ぶ「山越え道」は3本しかない。そのうちの1本を通って、台東から高雄へ向かった。
 車窓の風景はどんどん変わる。サトウキビ、ドラゴンフルーツ、イチゴの畑が並ぶのどかな農村や、パイワン族のカラフルな部落があるかと思えば、トビウオが大漁の海、暴れ波がテトラポットに打ちつける海岸も。自転車でツーリング中の人も結構いる(もちろんママチャリではない)。
 山越えが終わると、台湾海峡が見えてくる。水際に、スイカ畑が並んでいた。意外に思えたが、海水に近いと果物は甘く育つのらしい。ツヤツヤしたワックスアップルやマンゴーを売る店も並んでいる。
 高雄(カオシュン)は、台湾南部では一番大きな都市だ。港を軸にして、街は碁盤の目に広がり、道幅も広くて整然としている。なぜかといえば、高雄は日本が占領中に開発・整備したから、なのだけれど。今も造船や石油化学などの産業が中心で、大気汚染のため、街の上空に靄がかかっている。
 台東と比べると、色のない大都会に来てしまったなーと残念に思ったが、その印象は、自転車に乗って変わった。
 海岸沿いの倉庫街が、再開発で「ピア2」という名前のアートギャラリー地区になっている。古い線路や鉄道の車庫の跡地が、サイクリングロードだ。貸し自転車屋も集まっている。ここでもママチャリを借りることにした。
 ピア2周辺は、建物の外壁に描かれた絵や、面白いオブジェがいっぱいだ。途中、自転車をとめて入ったギャラリーでは、ブルース・リーがCGになって現代によみがえる不思議な映像を流していた。若いスタッフが一生懸命、作品の背景を英語で説明してくれたのだが、ブルース・リーを「ジャッキー・チェン」と言い間違い続けていたのがちょっと悲しく、年代の差かと思えばおかしかった。
 美術鑑賞しながらサイクリング。そのまま裏道を走っていくと、港に出た。さびれた港湾税関事務所の建物や、釣り糸をたらす人が見える。昔の神戸のよう。商店街では学校帰りの子供たちがかき氷を食べ、道ばたで豆腐を揚げるおじさんたちもいた。
 碁盤の目は、「表向き」の顔なのだ。裏道に入れば、庶民の暮らしが見えてくる。
 国立中山大学のキャンパスも通った。昔は高級ビーチリゾートだったそうで、ロマンチックな場所にある。放課後の学生カップルが、桟橋で寄り添って海を眺めていた。

◆  ◆  

 夜は、高雄の街の中心部を流れる「愛河」(ラブ・リバー)で、ボートに乗った。
 もともとは違う名前の川だったが、洪水が起きた時、台北から来た報道記者たちが、川のそばに「愛」という名の店の看板があるのを見て勘違いし、誤報した名前が人気を呼んで、そのまま定着したのだという。
 台湾人でも、しばらく高雄に行っていない人に「愛河でボートに乗った」と言うと驚かれる。「あんなくさい場所で?」と。昔は、生活用水が流れ込んで汚染がひどい川として有名だったからだ。10年ほど前に大規模な清掃が行われ、当時の市長自らが、きれいになったことを証明するため飛び込んで泳いでみせたとか。
 30分ほどのナイトクルーズは、カラフルにライトアップされた橋を幾つもくぐり抜ける。ソーラーパネルで発電するボートなので、エンジン音がせず、とても静か。自転車こぎで疲れた体を休め、うとうとするのにぴったりだった。
 


 

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