「食の砂漠、人種の壁なくそう」ロサンゼルス・ワッツに待望の「LocoL」開店、「Kogi」のシェフ、ロイ・チョイ
文&写真/佐藤美玲(Text and photos by Mirei Sato)
- 2016年1月19日
食べて飲んで写真を撮って…誰もがグルメ気取り。次々にオープンするレストラン。オーガニックにビーガンに…、テレビをつければセレブ・シェフの番組が花盛り…。
そんな「飽食」のアメリカで、「食の格差」は、いまだ深刻な問題だ。
金持ちが住む地域には、オーガニックのスーパーやファーマーズ・マーケットが集中し、「ヘルシー」を売り物にした食材が、いやという程並んでいる。
一方で、貧しいマイノリティーが住む地域には、生鮮食品が買えるスーパーもなく、買い物は酒屋かコンビニで。あるのはマクドナルドやタコベルばかり。スターバックス、落ち着いて座って食べられるレストランさえない。
そんな「食の砂漠」(food desert)が、アメリカには多く点在する。不健康な食生活は、肥満や病気発生率の高さにつながっていく。
ロサンゼルスのような「foodie town」を自認する大都市でも、それは顕著だ。
ロサンゼルスの南東部に位置するワッツ(Watts)は、典型的な食の砂漠地域だ。人口は約3万5000人。ビバリーヒルズとほぼ同じだが、「食のオプション」は比較にならない。レストランが開店するなど、何年もないことだった。
そのワッツに、1月18日、話題のファストフード店「LocoL」(ローカル)がオープンした。仕掛け人は、ロサンゼルスが生んだ人気シェフ、ロイ・チョイだ。
ロサンゼルスで育ち、名門調理師学校のCIAで学び、ビバリーヒルトンホテルで腕をふるったチョイ。2009年に家族や仲間とフードトラック「Kogi」(コギ)を始めた。
隣り合って暮らし、ロサンゼルス社会の底辺を支える二大移民、韓国系とメキシコ系。プルコギとタコス、キムチとケサディーヤ…。メーンストリームから「二流」に扱われてきたコリアン・フードとメキシカン・フードを融合させた。
ロサンゼルスでしか生まれないリアリティーのある味。コギ人気は、ツイッターで広がって大爆発。全米にフードトラック・ブームを巻き起こした。
その後チョイは、A-Flame、Chego、Potなど、次々に話題のレストランをオープンさせてきたが、フード産業から無視され取り残され続ける地域に、レストランを開きたいという夢を表明していた。
「人種の壁、食の不平等をなくし、社会を変えたい」
それが「LocoL」として、実現した。ジェームズ・ビアード賞の受賞者で、サンフランシスコの高級レストラン「Coi」をオープンさせたシェフ、ダニエル・パターソンと共同で計画を進めた。
地域の住民が慣れ親しんでいる「ファストフード」のスタイルとコンセプトだが、加工食品は使わない。値段も、ハンバーガーが4ドル、ボウルが6ドル、サイドメニューが1ドルといった具合に、手頃に設定した。スタッフの9割を、地元の住民から採用したという。
オープニングの18日は、早朝から、数ブロックに渡って行列ができた。ちょうど、マーティン・ルーサー・キング・デーの祝日にあたり、店内では「I Have a Dream」のスピーチも流れた。
店の構想で相談に乗ったというフットボール(NFL)の名選手、ジム・ブラウンも祝福に訪れた。ブラウンは、ワッツでギャング更生のプログラムなどに関わっている。
チョイとパターソンは、今後、北カリフォルニアのオークランド、サンフランシスコのテンダーロイン地区、ロサンゼルスのサウスセントラル地区にも、同じコンセプトでファストフード店をオープンする予定だ。
⚫︎LocoL
1950 E 103rd Street, Los Angeles, CA 90002
www.welocol.com
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