そんなベンが俳優としてやっとハマリ役に出会ったと筆者が思ったのが、新作「The Accountant」の主人公クリスチャン。サヴァン症候群で数字に関して並外れた才能を示す彼は、地味な会計士の顔と、悪に対して容赦しない殺人鬼の顔を持っている。自閉症ゆえに他人とのコミュニケーションがうまくないので、乏しい表情や感情のないセリフの方が説得力がある。そして、193センチの長身がアクション・シーンでは映えること!
本作の記者会見で、役作りについて話す彼は、父親としての顔も垣間見せた。
最も複雑で難しい役
「クリスチャンは、これまで演じた中で最も複雑なキャラで挑戦しがいのある役だった。しかもたくさんのリサーチが必要だった。リアルなキャラクターを作りたかったから、自閉症の人たちに直接会って様子を観察し、日々の暮らしや好きな映画などを聞いた。クリスチャンの人物像を複雑にすることでリアリティーが増すから、会った人たちから得たものを取り入れたよ。彼らは、実際に複雑な状況で複雑な生活・人生を送っている。生活に制限がある人もいれば、他の人にとって難しいことが簡単にできる能力を持っている人もいる。そして、アスペルガー症候群の人は機知に富んでいて、ユーモアたっぷりだってことも分かった。そういう要素もクリスチャンの中に入れたかった。とにかく、人それぞれ違う能力を持っているってことが分かったから、クリスチャンは絶対に複雑なキャラクターにすべきだって思ったんだ。彼は他人と心を通わしたいという本能はあるけど、それがうまくできない。そして、それを治すことはできない。女の子を前にして、腕を回してキスをするということができない。別のやり方で心を通わそうとする。それこそがまさに複雑で興味深いと思ったんだ」
一番心を痛める要素
ベンは離婚調停中の妻との間に4歳、7歳、10歳の子どもがいる。子どもたちとクリスチャンの症状について話したのだろうか。
「子どもたちは理解できる年頃だから、自閉症やアスペルガー症候群について話したよ。ただ、彼女たちの興味はレーティングだけで、『私たちが観れる映画にはいつ出るの?』って聞くだけだった(笑)。だから、『お前たちが25歳になったら観られるよ』って言うんだ(笑)」
親としての話題が出たところで、本作での父子関係について聞いてみた。クリスチャンの父親は、息子を「オレのルール」に従って育てる。親として、ベンは子育てにどんな考えを持っているのだろうか。
「本作の父子関係は、一番心を痛める要素だよね。僕は親として毎日、さまざまなジレンマに直面する。子供を育てるのに正しい道はどれだ? って考える。選択を迫られる瞬間の連続だ。当然のごとく僕らは間違えたり、失敗をしたりするけど、とにかくベストを尽くそうとする。自分の子供が傷つきやすく、弱い立場にいると知って恐怖を感じ、自分自身も弱い立場にいることを悟る。だから、この映画での父親の選択が分かるんだ。親でいるのは大変だよ」
セレブでも親としての悩みは同じだった。
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