教育 - いじめ(前編)
文/在米日本人フォーラム(Text by Japanese Forum USA)
- 2017年3月15日
問題を隠す日本、問題が起きたことに対する責任?
隠してはいけないアメリカ、問題を解決しないことへの責任?
「いじめ」に関して、日本での問題の解決の一助になればと思い、アメリカの状況を調べてみました。いじめの英語は “Bullying” ですが、アメリカも日本と同じようにいじめを苦に自殺するケースが起こっており、それを “Bullycide” という新語ができているように、アメリカでもいじめの問題は深刻です。
更に、日本ではインターネットや携帯電話の「ライン」を使っての誹謗中傷についても、アメリカでは “Cyber Bullying” と呼ばれ、問題視されています。
アメリカでのいじめの現状についていろいろな資料をもとに調査すると同時に、実際に高校の先生(インディアナ州の高校)、元テレビのインタビュアー(女性)、父兄(お母様)、大学生と高校生の方々にインタビューしました。
確かに「いじめ」はアメリカでも深刻な問題なのですが、日本とは対応が大きく違うようです。日本のいじめの問題は、隠ぺいされ表面化しないことで陰湿になりがちのようですが、アメリカではもっと関係者がオープンで対応も迅速のように思えました。アメリカでは、いじめの問題が起こったことに対する責任よりも、起こった問題を解決しないことへの責任の方が問われるからだと思われます。
いろいろな方々のインタビューを通じ、平均的な意見をまとめてみました。日本のいじめ問題への対策に有効と思えるものが散見されました。それぞれの意見は、インタビューした方々を一人称とした言葉で表しています。
1.中学校からクラスが存在しない
(ある父兄の方の意見): アメリカでは日本的「いじめ」をあまり聞いたことがありません。その大きな要因は、中学校からクラスが存在しないからではないでしょうか。中学校からは、必須科目とそれ以外は選択科目となり、授業は科目ごとに常に教室を移動します(その移動時間は僅かに5分で、数分遅れても遅刻とされます)。クラス制度の良否は多々あると思います。例えばメリットとして、クラスがあれば運動会や文化祭など組織として一致団結して物事を成し遂げる、そしてそこにチームワークなど互いの連帯感を培えるなどがあると思います。しかし、アメリカではそのような共同作業による行事がありません。一方で、クラスが無いことで交友関係が固定化しないため、グループで一人をいじめるという状況が生じにくいようです。
いじめ問題の克服を喫緊の重要課題とするなら、一度クラス制度を廃止してみてはどうでしょうか。先ずいじめ問題を解決することが優先されるべきでしょう。その結果、やはりクラス制度があった方が良いのならまた復活させるような柔軟性のある対応が許されるべきだと思います。
クラスが存在しないことは、すなわちクラス担任の先生がいないことを意味します。アメリカでは中学校以上は、日本でいうクラス担任は存在せず、代わりにその役目を果たすカウンセラーがいます。進学、生活関連、学業など、あらゆる事柄や問題の相談相手となります。しかし、学校側のカウンセラーから生徒や父兄にアプローチはしません。あくまで生徒又は父兄からアポイントメントを取って相談する形で対応されています。日本のクラス制度では、先生方(クラス担任という職責)の負担が余りにも過大で重く、超過勤務を強いるだけでなく、責任を全うすることが難しいように思われます。
2.アメリカの生徒は多面的社会を持つ
(別な生徒の母親の言): いじめが生じない別の要因は、アメリカの生徒たちを見ていると多面的社会を持っていることだと思います。多面的社会とは、子供たちにとって学校が日常生活の全てではなく、個々にいろいろな社会を持っていて(ボランティア活動、ソサイエティー、音楽、スポーツ、趣味など)同じ学校の仲間ではなく、交友関係が多面的です。
私の子供たちを見ていると、交友関係は極めて自由でお互い気に入らない、又は相性が良くないと思えばあえて無理をして付き合うという関係は一切ありません。
これを裏付けるものとして、
(その母親の高校三年生の娘さんの言): 日本のことは知りませんが、アメリカの学生達は、自己肯定が非常に強いと思います。一方で自分以外の人を認める(認めなければいけない)能力にも長けているように思います。例えば、アメリカの学生の中には、必ずしもグループに属する(群がる)ことを好まず独りでいたい人もいますが、そのような場合、周りはその人を認め独りでいられるように配慮します。
(筆者の感想)この母親と生徒の言から浮かび上がってくるのは、日本人は常にグループ又は仲間に属していないと不安という性質があるように思えますが、もともと農耕民族(集団の必要性)と欧米の狩猟民族(個別行動が基本)の長い歴史と文化の違いから来ているのかも知れません。
(後編へ続きます)
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