企業の無駄 - まとめ(後編)
文/在米日本人フォーラム(Text by Japanese Forum USA)
- 2018年8月20日
日本は昔から資源が乏しい国と言われてきている。しかし、ここで実は資源はいくらでもある、と言ったら誰もが怪訝な顔をするに違いない。これは事実である。ここで言う資源とは「無駄」である。つまりこの無駄をなくすことにより時間と金を創生することができる。こう言われると反論する人は少ないだろう。
前編では日本特有の企業内で育まれる組織の無駄について考察した。では無駄をなくすのに何をどこから始めればよいのだろうか。
一案を紹介してみたい。
外堀から考えてみよう。まずは学校教育だ。できるだけ平均的な生徒を多く作ろうとするような教育の時代は終わったと考えるべきだ。優秀な生徒をして、その可能性を摘み取るようなこと、あるいは平均的な生徒の中に押し込めるようなことはやめるべきだ。
優秀な生徒には、その才能にあった教育を与え、例えば特進(飛級)のような制度もあって良いはずだ。また自分の意見を堂々と言えるような教育も必要だ。そして個性の発揮できる教育がもっと重視されるべきと思う。
次に内堀に触れてみよう。企業の定期採用をやめることだ。優秀な人材を確保したにも拘わらず、企業が平均的な人間に育てようとすることは明らかに間違っている。
1960年代から80年代あたりまでは、新卒者の定期採用は十分に機能していたと思う。優秀な社員にはその能力を発揮できる機会が与えられ、責任とともに権限も与えられていた。
さらに失敗を恐れて何もしない社員よりも、失敗しても敢えてチャレンジした社員が報われる環境もまずまず存在した。
1990年代に入ってバブルが崩壊してから今に至る失われた20余年の長い景気低迷期によって、挑戦的意欲を削ぎ積極性を委縮させるような社会及び企業風土に変わってしまった。
そこでは、優秀と評価された新入社員をあえてごく平均的な社員にしてしまい、そして優秀な人材が十分に力を発揮し難い環境ができてしまったようだ。
これからの時代は急速に変わる。新しい技術の発展は人の知力や能力が成長するよりずっと早く変化している。その変化に全ての人たちがついてゆくことは極めて難しい。さらに社内で技術開発を全てこなすことも難しい。
それらの問題を解決できる選択肢は限られている。企業がその存続をかけて技術革新についてゆくには、必要な技術を持つ企業を買収するか、またはその能力を持つ人材をリクルートするしかない。つまり中途採用の道を開発すべきなのだ。
残念ながら人材を一から育成するには、人の成長は牛歩のごとく遅いため、今の変化のスピードに追い付かない。それ故に必要な人材を外から見つけ採用するのだ。
これは技術分野に限ったことではない。企業が必要とする人材が、社内に存在しないのであれば、外から見つけてくるしかない。
一方で、必要な人材を育成する道を妨げているのが、定期的人事異動だ。
定期的人事異動ほど無駄な行事はない。各社員の能力を見出し、その能力が十分に発揮できる職責を与え、その仕事のプロに育てるべきだ。
社員を適材適所に配することはモチベーションを高め会社への貢献度も高める結果になると思う。その意味では、社員をして必ずしも適した部署に配するとは言えない定期的人事異動は、人材の有効利用に逆行する制度そのものであり、往々にして社員の能力を埋没させかねない制度である。
これからの日本企業のあり方として、今までの全てをそのまま継承するのではなく、将来を見据えて新しい企業文化を構築する時が来ていると思う。
大きな変革に挑戦する1つとして、定期採用、終身雇用制度、年功序列制度、定年制度、定期的人事異動の5点セットを一度完全に解体してみるのも未来のためのイノベーションではないだろうか。
必要な人材は中途採用で確保し、無為の人材には終身雇用を保証せず、年齢に関係なく能力に応じた職責職階を与え、有用な人材には年齢制限なく働いてもらう、そして、ある特定の仕事のプロには定期的人事異動なし、と言った柔軟で開かれた制度によって、旧弊な制度に縛られた無駄を排除できるような、そんな企業こそ21世紀にふさわしく、サーバイブできる企業だと思う。
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