日本企業における運命共同体のコンセプトは是か非か〈後編〉
文/在米日本人フォーラム(Text by Japanese Forum USA)
- 2018年9月15日
日本は昔から資源が乏しい国と言われてきている。しかし、ここで実は資源はいくらでもある、と言ったら誰もが怪訝な顔をするに違いない。これは事実である。ここで言う資源とは「無駄」である。つまりこの無駄をなくすことにより時間と金を創生することができる。こう言われると反論する人は少ないだろう。
アメリカでは最近、セクハラが大きな問題として取り上げられている。たとえば、女優が良い役を欲しいと思えばその配役を選ぶ監督に取り入る必要がある。監督はそれを逆手にとってセクハラを行う。
多くの映画会社やテレビ局で似たようなことが行われてきたことが明るみに出て、誰もが知るところとなった。ここにきてようやく多くの被害者たちが個々の被害を公にするようになった。この勇気ある行動がきっかけとなり、我も我もとカミングアウトする人が”ME TOO”キャンペーンを展開し始めたのである。
運命共同体という意味で、日本人の「何でも団体行動」「何でも人と同じでありたい」「組織の中の一人でありたい」といった日本人の国民性を表す一つのアメリカンジョークを紹介しておこう。アメリカ人の友人から聞いたジョークである。氷山に接触したタイタニック号がまさに海に沈まんとするシチュエーションを使っての、各国の国民性を象徴的に表したものである。
タイタニック号が沈没寸前で、婦女子を優先して避難させようとしたところ、そうするには持てる救命ボートすべてを使い切ってしまい、残った男たちにはもう一隻の救命ボートも無いことが分かった。タイタニック号の船長は、婦女子を救命ボートで優先的に救助すること、そして男たちには救命ボートがまったくなく、ただ北海の海に飛び込んでもらうしかないことを説得しなければならなかった。そこで船長は、男たちを各国別のグループに分け、グループごとに説得し始めた。
その説得とは・・・・・・
(もともとこの話しはアメリカ人の友人から英語で聞いたもので、説得部分は英語のままとする。)
イギリス人に対して:You can do it because you are gentlemen.
アメリカ人に対して:You can do it because you are heroes.
フランス人に対して:You can do it because it is your love.
ドイツ人に対して :You can do it because it is a discipline.
イタリア人に対して:You can do it because it is your passion.
中国人に対して :You can do it because you can get a big money if you survived.
日本人に対して :You can do it because everybody does it.
このアメリカ人の友人から聞いたジョークからも分かるとおり、他の国の人たちから見ても、日本人が組織人間であり、「組織の中にあっての個人」「人と同じでありたい、同じであることで安心」「何をするにも個人よりも集団」という国民性は、日本人の持つ先天的本性なのかも知れない。
このような国民性を持つ日本において、個人が優先されるアメリカなら容易に組織に浸透するCode of Conductやwhistleblowerが育まれる土壌は、集団・組織が優先される日本では一朝一夕で培われることは至難のことと言わざるを得ない。
しかし、たとえ日本の社会組織を一挙に変えることができないとしても、やはり日本の企業・公官庁そしてあらゆる組織が開かれた組織になるべきであり、その組織では不正・違法行為が内部から正しく是正される仕組みが構築され、そして内部告発者を可能ならしめ保護される組織に変わって行かねばならない。
これが正しい方向性と分かりながらも、もし日本の組織全体を一挙に大改革ができないとしたら、できるところから始めるしかないだろう。それは個々の小さな組織、たとえば企業であれば課単位とか部単位で、草の根運動として組織内で「それは、違うだろう!」が言える環境・文化に変えて行くことである。
その小さな組織の改革の積み上げが、やがては日本の社会全体の改革につながって行けばよい。そして、最近世間を騒がせている財務省の森友学園の問題のように、追い詰められた担当官が自殺するような事例が完全にゼロとなる社会、さらには「社畜」という言葉が、いつか死語になる社会が実現されることを願ってやまない。
この記事が気に入りましたか?
US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします