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教育 - 大学の学生採用制度と大学教育のあり方(前編)
文/在米日本人フォーラム(Text by Japanese Forum USA)
- 2017年8月15日
アメリカの大学の学生採用は、日本の企業の社員採用と同じコンセプト?
日本の試験の点数一辺倒を是正し、アメリカ的学生採用制度の導入を検討してはどうでしょうか。
アメリカの大学にはAdmission Departmentが存在し、学生の採用権限を一手に掌握しています。学生採用制度を述べる前に少しアメリカの試験制度や学業成績評価の仕組みを知っておいて頂かねばなりません。
1.共通試験
アメリカにはACT(American College Testing:満点36 – 主に米国南部)及びSAT (Scholastic Assessment Test:満点2,400 – 主に米国北部)という全国的な共通試験制度があります。
日本の共通試験と異なるのは、ACTもSATも年間通じて何度も行われ、学生たちは希望すれば何度でも受験可能です。そして希望する大学に、自己ベストの試験結果を提出すれば良いことになっています。
2.学業成績
高校での学業成績(GPA: Grade Point Average)は、大学側の採用決定の資料として非常に重視されますが、それだけではありません。学業成績 (GPA)の評価は満点が4で、レベルの高い大学では3.5以上で無ければ受験できませんし、更にレベルの高い名門校では、受験資格として3.7とか3.8が求められます。
アメリカの中で、学業レベルに関して、南部と北部の偏差も存在します。これは私(JFUSAメンバーの一人)の子供たちの大学受験を通じて実際に経験したことです。
アメリカの大学は、入学の1年前又は2年前に志望する学生や保護者の訪問を受け入れ、大学施設の紹介、大学の教育方針、受験条件の詳細などを学べる機会を与えてくれます。それをキャンパスツアーと言いますが、カリフォルニア大学(UCLAとUC-Berkeley)を訪問した際、カリフォルニア大学の全キャンパスの受験条件として、アメリカ南部州在高校のGPAは8掛けで評価しますとの説明がありました。従い、南部の高校を卒業した生徒のGPAが満点の4であっても3.2としか評価されないのです。
当時、私たちは南部のアーカンソー州に在住していましたので、その評価条件を聞かされカリフォルニア大学は断念しました。この様に南部の教育水準への偏差(差別)が顕著に存在します。
3.学業成績以外の才能や能力
アメリカのトップレベルの大学に入れる生徒というのは、単に学業成績のみならず、芸術や運動における才能、また学校以外での地域社会での活動などが評価対象となり、全人格的能力を求められます。
トップレベルの大学への受験資格は学業成績が3.7とか3.8以上とは言うものの、ハーバード大学やMITと言ったトップ大学に入れる生徒と言うのは、まず学業成績が全学科において満点の4を揃えているのが当然とした上で、芸術や運動などの才能を有し、または学業以外の多様な社会的活動への参画など多面的な全人格的能力が優秀と評価される生徒だと言えます。
参考:
インディアナ州でトップクラスと評されるウエストラファイエット高校で成績がトップ中のトップであった生徒が、今年ハーバード大学に入ることができませんでした。その生徒のコメントが地元新聞(Journal & Courier紙)の記事となっていたのですが、その生徒いわく、自分は学業成績では他者に負けているとは思えない、さらに学業以外のボランティア活動も幅広くやって来たが、個人能力として音楽や絵画などの芸術的活動又は運動と言ったものを一切やって来なかったことが落ちた原因だと思うというコメントでした。この地元紙の記事は、アメリカの大学の採用基準が学業成績(試験の点数)に偏重していないことを物語っています。
4.エッセー
この学業成績に加えてかなり重視されるものとして、エッセー(小論文)があります。大学受験にほぼ必須のものとして提出が求められます。
その内容は、各個人の考え方、希望、将来の夢など自由なのですが、大学側の目的は、そのエッセーを通じて試験の点数や学業成績だけでは知りえないその生徒の資質を読み取ることにあります。この個人の資質の評価が採用条件となることは、日本の入試制度と大きく異なるところでしょう。
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