世界遺産とは●
地球の生成と人類の歴史によって生み出され、未来へと受け継がれるべき人類共通の宝物としてユネスコの世界遺産条約に基づき登録された遺産。1972年のユネスコ総会で条約が採択され、1978年に第1号が選出された。2018年1月現在、167カ国で1073件(文化遺産832件、自然遺産206件、複合遺産35件)が登録されている。

大地の営みが今も続く、キラウエア火口のハレマウマウ・クレーター
©Island of Hawaii Visitors Bureau (IHVB) / Ethan Tweedie
太平洋にぽっかりと浮かぶハワイ諸島は、ホットスポット(マグマの噴出口)から流れ出た溶岩とプレートの移動によってできた島々。その最大の島・ハワイ島の南東部にそびえるのが、世界でも有数の活火山であるキラウエアとマウナ・ロアだ。ここでは今も活発に火山活動が続けられている。火口から流れ出した溶岩が海岸線を押し広げ、大地を創造する様子はまさに地球が生きている証。これらの火山地帯は地球形成の歴史を知るうえでの貴重な資産として、1987年に世界自然遺産に登録された。
これらの活火山を保護する「ハワイ火山国立公園」は、約33万3000エーカーもの広さを誇る。ハワイ島の火山は活発ながらも爆発的な噴火が少なく、比較的穏やかなのが特徴だ。そのため溶岩流に近づくことが可能で、世界でもっとも活発な火山活動をもっとも安全に観察できる場所ともいわれている。そうは言っても、刻々と姿を変える自然の脅威は侮れない。まずは「キラウエア・ビジターセンター」へ。ここでは道路状況や安全情報などを教えてくれるので、最新情報をもとにルートを考えよう。館内ではハワイ島の生態系や文化に関する展示、公園の見どころを紹介するビデオ上映なども実施されている。
ビジターセンターの目の前には、クレーター・リム・ドライブと呼ばれるキラウエア山頂の火口に沿った道路が走っている。現在、西側は立ち入り禁止となっているため一周はできない。道路沿いには火山研究の資料を見られる「ジャガー博物館」や、地中深くの熱い火山岩に触れて蒸発した雨水の蒸気が噴出する穴「スチーム・ヴェンツ」、数百年前に形成された溶岩洞「サーストン・ラバ・チューブ」のほか、ハイキングコースなど数多くの見どころが点在する。

溶岩の通り道だったラバ・チューブ
©Island of Hawaii Visitors Bureau (IHVB) / Kirk Lee Aeder
ジャガー博物館や数カ所の展望台からは、キラウエアの火口が望める。直径2〜3マイルの火口内で煙を上げているのが、現在もっとも活動的なハレマウマウ・クレーターだ。ここには火の女神・ペレが住むといわれており、古来ハワイの人々から厚い信仰を集めてきた。度重なる噴火はペレの怒りによるものだと考えられ、火口では祈りや供え物を捧げる人も多いという。キラウエア火山から西方向へ目を向けると、なだらかな斜面に幅広な山裾が圧倒的なスケールを誇るマウナ・ロア火山も見ることができる。
クレーター・リム・ドライブの南側からは、チェーン・オブ・クレーターズ・ロードという道路が海岸へ向かって20マイルほど伸びている。溶岩に刻まれた、ペトログリフと呼ばれる考古学的にも重要な絵やシンボルが2万以上も見られる「プウ・ロア・ペトログリフ」や、流れる途中で固まった溶岩が作り出す海岸エリアなど、一帯に広がる光景は異世界のよう。
火山活動をはじめ、ここにしか存在しない固有種などからも地球形成のカギを示してくれるハワイ火山国立公園。穏やかに見える南国の楽園では、今も壮大な大地のドラマが続いている。

ペトログリフは人や動物、円形などさまざま
©Hawaii Tourism Authority (HTA) / Tor Johnson
ハワイ火山国立公園
Hawaii Volcanoes National Park
登録年 1987年
遺産種別 世界自然遺産
https://www.nps.gov/havo/index.htm
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