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たばこのみ申す間敷候(たばこのみもうすまじきそうろう)-(前編)
文/在米日本人フォーラム(Text by Japanese Forum USA)
- 2018年3月15日
日本は昔から資源が乏しい国と言われてきている。しかし、ここで実は資源はいくらでもある、と言ったら誰もが怪訝な顔をするに違いない。これは事実である。ここで言う資源とは「無駄」である。つまりこの無駄をなくすことにより時間と金を創生することができる。こう言われると反論する人は少ないだろう。
1.慶安御触書
「たは粉のみ申間敷候是ハ食にも不成結句以來煩ニ成ものニ候其上隙もかけ代物も入火の用心も惡候万事ニ損成ものニ候事」 (読めましたか?)
(現代語訳):たばこを吸わないこと。これは食物にもならず、いずれ病気になるものである。その上時間もかかり、金もかかり、火の用心にも悪いものである。全てにおいて損になるものである。
慶安御触書(けいあんおふれがき)は、江戸時代の第三代将軍徳川家光期にあたる慶安2年(1649年)に、江戸幕府が農民統制のために発令した幕法とされている文書。現在では幕法ではなく、元禄10年(1697年)に甲斐国甲府藩領で発布されていた農民教諭書が慶安年間の幕法であるとする伝承が付加され広まったものと考えられています。
この御触書は370年も前に、たばこがいかに無駄で害をなすものかを、まさに妙を得て言い当てていると思いませんか。さすがに昨今の受動喫煙の害までは言及していませんが、「腹の足しにならず、いずれ病気のもと、時間と金の無駄、火事の危険、結局万事において損そのもの」、と断じ切っているのです。
これだけ言われても、たばこはなかなか止められない厄介な代物です。ここでは、喫煙者の方々に、たばこは大きな無駄と損と、自他共に有害であることをご理解いただいて、できるだけ止めることをお勧めするお話しをしたいと思います。
2.私事
私が禁煙をお勧めしたら、私の過去を知る友人たちからは、「この裏切り者!」と、大変なそしりを免れないでしょう。かくいう私は、26年前の1992年1月23日までは、とんでもないヘビースモーカーだったのです。当時ショートホープファンというのがありまして私もその一人で、一日に一箱10本入りを7-8箱吸っていたのですから筋金入りのチェーンスモーカーでした。そんな私がある日突然たばこをやめたお話しをします。
1991年のことです。経営不振に陥った事業会社を清算する仕事を私が担当することになりました。それまで会社をつぶす経験など無い私は、会社清算が専門の弁護士に教えを乞うために大阪に出張しました。その弁護士から、会社をたたむ難しさ、一度揉めたら10年はかかる、ひょっとしたら頬に傷をもつ怖い人が出てくる、下手すると親会社の門前に筵(むしろ)旗が押し寄せるなど、散々怖い話しを聞かされました。これは余程根性を入れ直し、ふんどしを締めなおして事に当たらねばと覚悟を新たにしました。
皆さんは、「何とか断ち」という言葉を知っていますか。何か目標達成のために、成就するまで自分の好きなものを断つのです。私の母は、全身が黄色くなるくらいみかんが好きでしたが、何かあるごとに例えば私の大学合格を祈念して、こっそりと「みかん断ち」をしてくれていました。「お茶断ち」というのもよく聞きます。私の場合、仕事の達成への覚悟を固めるために、何か好きなものを断ってやろうと決心し、それが「たばこ断ち」だったのです。その始まりが1992年1月23日、弁護士を訪問した帰りの新幹線の中でのことでした。
禁煙してからのつらさは、よく三日、三週間、三ヵ月と言いますが、そんな生易しいものではなく四六時中、「吸いたい」という強い衝動が押し寄せてきます。本当につらかったです。しかし、衝動が押し寄せるたびに5秒間ほど我慢すれば何とか一時的に収まります。そんな衝動を多分何十万回と我慢したのだと思います。
問題の会社の方は、裁判所に会社清算を申請し、そして私の名刺はいきなり代表取締役社長から「代表清算人」に変わり、二年後無事に会社の清算が成就しました。それで「たばこ断ち」の役目は終わったのですが、その後はいつ吸っても良いという気楽さと、一方で折角止めたものを一日延ばしで続けてやろうと思い、とうとう今に至りました。禁煙を長く続けていると、吸いたいという衝動の間隔は間遠になり強さも減じてゆきました。今ではその衝動は全く起こりません。しかし、食後のたばこのうまさは今も覚えていますし、時々、たばこをのむ夢を見ます。それがまた夢の中でも美味しいのです。しかし、その後に「折角止めていたのにぃ・・・、」としきりに後悔している夢なのです。
もしたばこを止めたいと思っておられる方には、何か目標(達成が難しいのがいいでしょう)を掲げて、「たばこ断ち」をお勧めします。さらに愛する妻のためにとか(これはあまり効かないかも知れません)、お子達が大学に入るまでとか、お孫さんが入学するまでと言った可愛い人のためというのは効果があると思います。(後編に続きます)
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