出産について考えよう Vol.3
〜着床前診断とは その2〜
- 2018年7月8日
不妊治療や卵子提供、代理出産など、妊娠に関する悩みを持つ人は多くいます。そんな方々のために、不妊治療をサポートする専門のエージェンシー「LA Baby」が、不妊治療の可能性や選択肢の正しい情報を紹介していきます。
前回のコラムでも述べたように、着床前診断とは受精卵の染色体が正常かどうか、異常な受精卵がないかを検査し、移植する方法です。また、染色体異常を調べるのと同時に受精卵の性別も分かるので、希望する性別の受精卵を移植することが可能です。
アメリカでの着床前診断の状況
アメリカでは、1980年代から着床前診断の研究と臨床を行い、今でも日々進歩している診断方法の一つです。着床前診断には、PGD(Preimplantation Genetic Diagnosis)とPGS(Preimplantation Genetic Screening)という2つの方法があります。PGDは特定の遺伝子疾病を検査する方法で、PGSは受精卵に染色体異常があるかどうかを調べる方法です。WHO(世界保健機関)では、PGT-A(Preimplantation Genetic Testing- Aneuploidy)と総称しているため、クリニックでもPGTと呼ぶこところが増えてきました。
PGDの中には、FISH染色という検査方法があります。この検査方法で問題のある報告が世界中から届き、弊社では着床前診断を希望される患者様に対して、着床前診断のリスクや報告例を説明し、慎重に進めていた経緯があります。
後にPGSのNGS法(Next Generation Sequencing)などに移行してから状況が変わりました。この検査方法では問題となる報告例がほとんどなく、着床前診断(PGS)で全染色体を検査し移植した場合に妊娠率は上がり、流産率が下がる結果となりました。
着床前診断による世界中からのデータが集計され、メイヨークリニックがすべての統計データを分析したところ、卵子ドナーの年代では着床前診断をしても、成功率はそんなに変わらないという結果も出ました。しかし総合的に見ると、出産率は上がっています。もちろん精子の質も深く関連しているので、個人差があるのは事実ですが。
弊社での着床前診断の対応
世界での着床前診断の状況は日々変化しています。私たちは、LA Babyとして活動し始めた2004年から着床前診断の調査や研究を行い、患者様にご案内をしています。
着床前診断に関する報告は世界中から発表され、信頼できる情報の選別やその有効性の判断も注意深く検討してきました。発表される論文も良い部分のみが強調され、経験した方でしか分からない部分も多く、念入りに調べる必要がありました。あまり良くない報告も多く、ニュースや各クリニック等から発信される情報に惑わされないよう、着床前診断による調査は独自に行い、技術改革を進めていました。
弊社提携先のクリニック内でも、着床前診断の研究・調査は積極的に取り組んでいます。世界の研究や実績状況を患者様に正直に伝えながら説明してきました。その結果現在では、着床前診断による妊娠率は上がり、流産率は下がっています。
おわりに
弊社の今までの実績から分析すると、染色体異常がある受精卵は全体的に少ないです。その理由として、卵子提供プログラムの場合、事前に卵子ドナー(エッグドナー)のスクリーニングをするからです。まったく異常が見られないケースも多く、着床前診断の必要性にも細心の注意を払って検討してきました。
たとえ着床前診断を行い、染色体異常がない受精卵を移植したとしても、当然グレードの良い受精卵や、生命力のある受精卵でなければいけません。受精卵は卵子と精子でできているので、もちろん精子の状態でも結果は大きく変わります。また、着床しやすい母体の環境作りも大変重要です。これらすべての条件が揃った環境で、出産率が上がります。
着床前診断を決断する前には、患者様ご夫婦のスクリーニングが必要です。弊社の卵子提供プログラムでも、ここ数年で着床前診断(PGS)をされる方が増えているのが現状です。着床前診断について賛否両論ありますが、少なからず必要とする患者様はいます。
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