- Home
- 学び・教育
- 子供の教育in USA
- 海外教育Navi 第11回 〜帰国後、日本に適応するには〜〈前編〉
海外教育Navi 第11回
〜帰国後、日本に適応するには〜〈前編〉
記事提供:『月刊 海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)
- 2018年9月6日
海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団に所属するプロの相談員たちが一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。
Q.海外生活が長く、親子共に日本での生活がイメージできません。学校を含め、日本に適応していくにはどうしたらよいのでしょうか。
はじめに
本コラムの第5・6回「帰国後、編入学のための準備」で、日本の学校への編入を前にしてご心配されているかたへのアドバイスとして、このようなことばを記しました。
「ご心配なく、お子さんの力を信じましょう。必要なのは『なるようになる』といったぐらいの前向きな心です」
今回のテーマに際しても基本的な思いは同じですが、海外において大きな不安を抱えているかたに少しでも楽な気持ちで帰国していただけるよう、いっしょに考えていきましょう。
適応の不安とは?
ところで、具体的にどのようなことに適応の不安を感じていますか? 漠然とした不安なら、ノートなどに気になる点を書き出してみましょう。もしお子さんも親御さんと同じ気持ちを抱いているとしたら、親子でいっしょにされるといいでしょう。すると、その不安要素がはっきりと目に見えてきます。案外、「大したことではない」と思えるようなこともあるかもしれません。
海外に住まわれている間に日本も学校も変わってきているはずです。ひと昔前ならお子さんの適応について努力しなければならなかったことが、もう必要でないこともあるでしょう。でも「これは重要な問題だ」と思われたら、その解決に向けて家族で取り組んでください。
次に海外においてできることと、帰国後にできることをそれぞれ見ていきましょう。
海外にいる間にできること
海外にいる間は、できるだけ現在の日本の生活や文化について情報を得ておくことが大切です。日本での生活をイメージすることが難しいのなら、日本に住んでいる親しい人たちから話を聞くとよいでしょう。映像などを通して見ることができればなおさらよいと思います。
ご参考までに、日本の学校で多く見られる様子について、いくつか挙げてみましょう。
・小学校では基本的にランドセルを使用しているが、リュックを使用している児童もいる。
・小学校の登下校では親の引率はなく、徒歩。学校によっては、集団登下校を実施したりバスなどを利用したりする場合もある。
・下駄箱があり、外靴と上靴を履きかえる。
・朝の会や終わりの会がある。
・授業の多くは、机を前に向けて先生の話を静かに聞くスタイル。意見や質問があれば、手を上にしっかり挙げて、先生から指名されたあとに行う。
・課題によってはグループ学習もある。また最近、アクティブラーニングという課題探求型の授業が研究・実践されているように、授業スタイルも変わりつつある。
・現在、小学校では1006字の漢字を学習する。
・小学校3年生より書写の時間があり、毛筆を学ぶ。
・小学校では、現在5・6年生で週1時間の外国語活動(ほとんどが英語)を実施している。
・2020年度からの学習指導要領では、小学校3年生から英語教育が始まり、小学校5・6年生で「読む・書く」に加えて「三人称」や「過去形」など中学校で学ぶ内容も入る予定である。
・体育の時間は体操服に着がえる。低学年は教室で男女いっしょに着がえることが多い。高学年は更衣室などで男女別々に着がえる。
・体育館では体育館用の靴を使用する。
・体育ではさまざまな内容を実施しているが、跳び箱や鉄棒など、できるかぎり全員が達成できるように取り組んでいる。
・音楽では学年によって鍵盤ハーモニカや縦笛を使い、全員が習得できるように取り組んでいる。
・アメリカの現地校やインターナショナルスクール等は長所を褒めて伸ばす教育。日本では不得意な分野を克服させ、すべてを平均的にこなせるようにする教育といった印象を持たれがち。
・授業中の飲食は禁止されていて、昼食までに軽食などをとることもない。
・トイレは洋式トイレが増えつつあるが、和式も多い。
・友達と連れ立ってトイレに行くような姿も見られる(特に女子)。
・ 小学校は給食を実施している。中学校では自治体によって給食の学校もある。高校は各自弁当持参だが、パン等を購入したり学食を利用したりすることもある。
・掃除の時間があり、児童・生徒が清掃活動を行う。
・中学校や高校の部活動では先輩・後輩という上下関係ができていることが多い。
地域や学校規模、公立か私立か等の違いによって多少の異なりはありますが、以上が日本の学校の一般的な様子です。日本での学校生活の経験がほとんどないお子さんにとっては、「えっ! どうして?」と感じることもたくさんあるのではないでしょうか。
こういった日本独特の学校文化を本帰国の前に体験してみることもお勧めです。小学生なら、一時帰国の際に地元の小学校に体験入学という形で入れてもらうといいでしょう。ただし、市町村教育委員会や学校によって体験入学への対応が違います。かならず事前に体験入学を希望する学校に連絡を取り、手順を踏んで了解を得てください。
お子さんが得意なことや興味を持っていることを伸ばすことも、日本での適応を進める方法の一つです。何か自信を持てるものがあれば、新たな環境に立ち向かう際に大きな心の支えとなります。
→「第12回 〜帰国後、日本に適応するには〜〈後編〉」を読む。
教育相談員
菅原 光章
1979年から奈良県の公立小学校に勤務する。1983年より3年間、台北日本人学校へ赴任。帰国後は奈良市立小学校に勤務、教頭・校長を歴任する。また奈良県国際理解教育研究会の会長を務めた。退職後、奈良県教育振興会理事ならびに同志社国際学院初等部の教育サポーターを務める。2016年4月より海外子女教育振興財団の教育相談員。
この記事が気に入りましたか?
US FrontLineは毎日アメリカの最新情報を日本語でお届けします