【ニューヨーク不動産最前線】
不動産エージェントの事情

賃貸、売買に関わらず家探しをする時、みなさんは不動産エージェントに依頼されると思います。今回は、この不動産エージェントについてのお話です。最近では、自分の専用エージェントを決めなくてもネットで物件が簡単に検索できます。ですが、売主、貸主には不動産エージェントがついているため、結果的には何らかの形でお客さんは不動産エージェントと関わることになります。

エージェントの資格は州の認定です。基本的に州のテストに合格すればライセンスが取得できますが、これは永久資格ではありません。ライセンス維持のためには、2年ごとに22.5時間の講習(Continuing Education)を受けて更新が必要です。私はNYCで20年以上不動産ブローカーをやっていますが、あっという間に2年が経って、その都度講習を受けてきました。実は今まさに講習を受け終わって、州にライセンス更新の申請を出したところです。毎度ながら、講習が終わると肩の荷が下りた感じでホッとします。

余談ですが、Continuing Educationはオンラインで受講できます。私もライセンスを取ったばかりの頃は、その都度学校に行ってクラスを受けていましたが、22.5時間というとまるまる3日間クラスに缶詰になり、結構仕事にも支障が出ていました。しかし、オンラインになってからは自分で時間を選んで受講できるので、とても助かっています。途中で中断しても、またいつでも始められるし、受講料もクラスに出るのに比べて格段に安いです。

2種類ある不動産エージェント

さて、不動産エージェントには2種類あり、今回はその違いについてお話ししたいと思います。不動産エージェントの資格には、セールスパーソンとブローカーの2種類があります。ライセンスは州によって違いますが、ニューヨーク州の場合は、セールスパーソンになるために州の試験にパスすることが必要です。まずは専門の学校(もしくは大学の不動産エージェントコース)で講習を75時間受けます。講習の最後に学校のテストがあり、それにパスすれば、次に州のテストを受けられます。州の試験に合格すれば、晴れてライセンスが送られてきます。

でも、セールスパーソンの場合は、いきなり営業活動ができるわけではなく、必ずライセンスをどこかの不動産会社に登録することが必要です。登録して初めてセールスパーソンとして、その会社のブローカーのスーパーバイズのもとに、賃貸や売買の業務を行うことが出来ます。

セールスパーソンとして実績と経験を積めば、次にブローカーになることができます。ブローカーになるためには州の定めたポイントをクリアすることが条件で、最低でも2年間継続してセールスパーソンとして活動することに加えて、州の定めるポイント、つまり過去の取り扱い実績(金額と件数)がカウントされます。さらに、認定校での45時間のクラス受講が必須です。

受講後にセールスパーソンの時と同様、学校のテストと州のテストがあり、これに合格すればブローカーになります。ブローカーになると、どこかの不動産会社に登録する必要はなく、独立して自分でビジネスを行うことができます。もちろん今まで通り、会社に登録してスポンサーの会社名を使って活動してもオッケーです。

ブローカーになるのは強制ではなく、もちろんセールスパーソンとしてずっと何年も何十年も活動することも可能です。しかし、責任は発生しますが、やはりブローカーとして活動しているエージェントの方が信用度が高いのは、言うまでもありません。

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柏原知子 (Tomoko Kashihara)

柏原知子 (Tomoko Kashihara)

ライタープロフィール

大阪女子大学(現:大阪府立大学)卒業後、CBRE Japanに入社。東京で外資系企業のオフィス移転を担当する商業不動産ブローカーとして働いた後、ニューヨーク勤務を機に住宅ブローカーに転向。1999年より住友不動産販売NYで活躍した後、2021年に米系大手Compassに移籍。趣味は旅行、クルーズ、トレッキングとイタリア語。

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