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海外教育Navi 第45回
〜子どもが海外生活でうまくやっていく方法〜〈前編〉
記事提供:月刊『海外子女教育』(公益財団法人 海外子女教育振興財団)
- 2020年2月1日
海外勤務にともなう子育てや日本語教育には、親も子どもも苦労することが多いのが現状。そんな駐在員のご家族のために、赴任時・海外勤務中・帰任時によく聞くお悩みを、海外子女教育振興財団の教育相談員等が、一つひとつ解決すべくアドバイスをお届けします。
Q.海外赴任が決まりましたが、子どもは引っ込み思案で海外でうまくやっていける気がしません。できれば家族でいっしょに行きたいのですが……。
海外赴任に伴い、「引っ込み思案」のお子さんが海外でうまくやっていけるのか、親としては不安が募りますね。
私はアメリカに滞在中、現地校でボランティアをしていましたが、同じように不安を抱えていた日本人のお母様たちにたびたび会いました。でも大丈夫です。親の心配をよそに子どもたちは時間と共になじみ、自分の居場所を見つけて変わっていきました。
そうした体験も踏まえながら、今回のご相談には「リフレーミング」、「子どもの積極性を育てる5つのヒント」をキーワードにお答えしましょう。
リフレーミング
次のことばを聞いたことがありますか。
「よいも悪いも本人の考え方次第」
シェイクスピアのことばです。
人は自分の価値観や習慣、そのときの気分などに影響を受けて物事を評価します。同じ体験をしても人は自分の価値観という枠組みのなかで判断するので、受け止め方は人それぞれです。
リフレーミングとは、「ある枠組みで捉えられている物事を違う枠組みで見てみること」です。たとえばコップに入った半分の水を見て「もう半分しかない」とみるか、「まだ半分あるじゃないか」とみるか。リフレーミングの目的は、いままでの考え方とは違った角度から見つめ直して、意図的に自分や相手の生き方をボジティブなものにしていくことです。
自分自身やお子さんの欠点だと感じている性格をリフレーミングしてみましょう。
たとえば……
・周りを気にする⇒心配りができる
・目立ちたい⇒自己表現が活発
・いい加減⇒こだわらない
・消極的⇒控え目
リフレーミングの効果は……
・感情面のマイナスをプラスにすることができる。
・弱点や欠点を強みや長所に転換できる。
・相手に大切なことを気づかせることができる。
・人生における幅を広げられる。
等々、十分に話を聞いて共感したあとに、リフレーミングをすると相手の心をすっきり、元気にすることができます。
リフレーミングを理解するために心に留めておきたいことが2点あります。
①出来事そのものに意味があるのではなく、人は自分の目の前にある出来事に意味づけをしている。
②人は意識しないかぎり、プラスかマイナスかのどちらかに意味づけをし続ける傾向にある。
子どもを信じて見守ってあげましょう。不安な気持ちを受け止めて、励ましながら長所を伸ばしてあげることが大切です。
子どもの積極性を育てる5つのヒント
子どもが消極的になる原因はおもに3つあるといわれています。
①生まれつき内向的な性格
②乳幼児期の愛情不足
③コミュニケーションの欠如
最も大きい原因が③だといわれています。コミュニケーション力が弱いと、どうしても自分に自信が持てず、引っ込み思案になりがちです。
では、子どもの積極性を育てるためにはどうしたらよいのでしょうか。5つのヒントを見ていきましょう。
1. 親子の会話を増やす
子どもとたくさん会話をしましょう。そのためには子どもの話す内容に興味を示して子どもの話が続くように質問を繰り返します。「〜だよね」「わかる、わかる!」「それで〜どうしたの?」と。
ただし、しつこくならないように注意したいものです。共感しながら会話を楽しんでいきましょう。聞き方は、目を見て、笑顔で、うなずきながら! たくさん話を聞いてもらった子どもは、相手の話を聞くことができる大人へと成長していきます。
さらに人の気持ちがわかる子どもに育てるには「相手の気持ちを察する」機会をつくることも必要です。「〇〇君、どんな気持ちだろうね」「〇〇さん、きっと寂しいんだろうね」などと話を向けることも大切です。
2. 経験は大きな財産。世界を広げる
スポーツクラブ、地域の行事やお祭り、家族旅行等、いろいろな体験をさせましょう。
海外生活は親子の世界が大きく広がる絶好のチャンスです。文化も習慣も異なる新しい場所での体験は子どもの人生にとって得がたい貴重な財産となります。最初は不安もありますが、自分の力で居場所を獲得していくプロセスには生きていくための要素がたくさん含まれています。
さらに海外ではさまざまな生き方に触れることができます。中高生になると外国人の仲間たちと精神的な交流を深めることにもなるでしょう。それは日本人としての自分と向き合うことにもなります。これほど貴重な体験はありません。
私は多くの帰国子女と話す機会がありますが、帰国子女は、国内で育っている子どもより大人としっかり会話ができることが多く、いつも感心させられます。異文化のさまざまな経験を通して、向き合う人とどうかかわればよいのか察知する力、対応する力が身についたのでしょう。将来への大きな財産です。
→「第46回 〜子どもが海外生活でうまくやっていく方法〜〈後編〉」を読む。
海外子女教育振興財団「渡航前配偶者講座」講師
小木曽 道子
ドイツとアメリカ・ロサンゼルスに合計10年間滞在。アメリカではふたりの娘を現地校に通わせ、現地校のボランティア活動に参加。地区教育委員会で二カ国語諮問委員会の議長を3年間務め、海外から転居してきた親子をサポート。帰国後、海外子女教育振興財団「現地校入学のための親子教室」の講師を務め、現在は「渡航前配偶者英語講座」の講師および「外国語保持教室」のサポートスタッフを兼務しているほか、東京都青少年・治安対策本部青少年課青少年応援ナビゲーター、「日本マチュピチュ協会」理事を務め、カウンセラーとしても活動している。
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